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目が、痛む。
彼はぐったりして背もたれに体重をやった。
イスの軋みが鼓膜を震わせる。三度ほど頭を振った。執拗に追いかけてくる猟犬のように、鋭い獰猛さを伴って、疼きは彼に取り憑いたまま離れようとしなかった。
内部で、虫が膿んでいるような妄執を感じることが増えた。痛みが長引けば妄執はますます競りあがる。掻き毟りたい衝動が頭をもたげ、ヴンヴンと飛び交った。目の奥が痛みを伴うほどあつい。彼は、先ほどより強く首を振った。
膝を伸ばして、背後に聳える出窓へと腕を伸ばす。
右側に二枚のガラス戸を押しやる。
黒々とした絨毯の向こうで、ボヤけた月が佇んでいた。また、片目が疼く。
じく、じく。じく、じく。
目のフチを辿る手つきはおぼろげで、彼は月を見上げたまま視線を外さずにいた。
溢れかえるほどの黒。
銀色の光、赤味を帯びた光。
天がまばたく。彼も両目を瞬かせた。目が、まだ痛い。一生、この痛みから引き離されることはないのだ。彼は、痛みを堪えながら、確信する自分自身に怯えたような顔をして両目を閉じた。
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