リングとミリオン:ターン5 


「あかいがいこつ」








「――――っ」
「おい!?」
 膨れる青い碧眼に、狼狽しきった沢田綱吉が映される。真っ赤に変色する右目は手に覆って隠し、六道骸は俯いた。
 食ってかかる勢いの綱吉が、逆にガッと手首を握り返される。
「何すんですか、顔に」
「あ、ご。ごめん、――…っ」
 驚き、力加減を間違えてしまって綱吉は骸の外帯を握り潰してしまった。
 舌が痺れて、刺激的な味わいがした。
「目。目! どうした!? それなんなんだよ。なんだよ、目が真っ赤じゃん!!」
「……いずれバレるとは思いましたよ。避けたところで君、近所ですし。デリカシーなんぞないから」
「はあああ!? なんだよっ……避ける!?」
 ん!? 許嫁が嫌だから――、先日までオレを避けてたんじゃ?
 齟齬に気づき、思考回路が鈍化する。
 そのすきに、幼馴染みの少年はそのよく整った面差しを歪にゆがめて口角を持ち上げた。
「問題は、ありません。視野は良好。痛みは無い。今は様子見している。騒ぐのは止めてくださいよ、面倒だ」
 少々よれた、折り目がついてしまった眼帯が、赤い右目に被せられる。紐を左右の耳に伸ばして引っかけ、装着した。
 踵を返して、背中越しに告げた。
「鍵閉めますよ、出てください」
「え、えええっ……、骸!?」
 潮目が引くようにして、彼はそそくさと上級生の教室がある上層階へと上がってしまう。
 廊下に、ひとりきりになる。頭上からチャイムが聞こえた。
 ――お昼休みである。
「――骸いますか!」
 あんな異常な眼球。それも幼馴染みの身の上で、現在進行形で起きていることだ。
 結局は知らんぷりができずに綱吉は三年生の教室へと上がってきていた。
 席がぽつぽつと空いている。彼は教科書を小脇に携えて、女子に囲まれていた。
 綱吉を見つけるなり左眉がぴくっと跳ねる……が、綱吉とて引くに引けないところもあるのだ。
(迷惑だろーけど、んなら返事しろってんだよ!!)
 メールにて『さっきのは?』、『目はどうしたんだ』など、送信している。なのに無視され通しだ。おかげで午前中の授業はうわの空だ。
 さざ波が戻ってくるように、『失敗しても、ダメでもいいんですよ』、と年嵩の青年の励ましは胸に残響する。
 ――『自分のためにできない、なら僕の為に』ともガイは言った。
 あのとき、がんばると約束した。あの夜の気まずさに心強さが今、確かに両足を踏んばらせている。
(だって……、どう考えたってただごとじゃないだろ!)
「……骸先輩っ。すみません、お時間を頂戴できませんか」
 がばっ! 腰を曲げて頭を下げる。
 ややして、「……いいですよ」と、返事が聞こえた。教科書が机に置かれた。
 三年生たちの好奇の目を掻い潜って、二階にある美術準備室にまで案内される。骸はポケットから合鍵を出し、なんてことなくそこを解放した。
(生徒会長だからってそこまで権力あるーっ!? って……いやいや!)
 ツッコミの欲求を耐えて、綱吉は自分の喉首に手を当てる。
 美術準備室の戸をピシャリと閉ざすと、生徒会長は好々としていた仮面を脱いだ。
 耳に引っかけている眼帯の紐を、ぴんっ、爪先にはじき、仏頂面になる。
「君。これ、握りしめたでしょう。ガタガタしちゃってるんですが?」
「お前、何がどーしてそんなになっちゃったんだ」
「言う必要ありますかね」
「気になるに決まってんだろーっ!?」
 両手の指をわなわなさせてツッコミするも、骸の青い左目は皮肉そうな輝きを強めた。
 綱吉は、自分から距離を詰めて、間近から六道骸を見上げようとする。
「見せてみろよ。眼帯、取って……うわ! ほら! ほらーっ!! まっ赤っか!! ヤッバイだろ!? 病院は? 病院には行ったのか? なんて言われたんだ?」
「……――――」
 目から外した眼帯が、盛大にぐしゃっと骸本人の手によって握り潰された。
 荒立った語気とともに眉間をしわ寄せて、両手では綱吉の頬を左右からむぎゅううううと挟みあげた。
「んぶっ!? っ!?」
「そんなに、僕の目が見たいですか? ほらどうぞ、ぞうぞ。好きなだけ!」
「ちょおおいっ!? う…わ、わ!」
 両頬を寄せられながら、綱吉はだが、迫ってきた奇異な眼球に目が奪われた。
 真っ赤。真紅の眼球。
 ちょっと前までは晴天ほどに輝く青い眼球だったのに。おまけに『六』の数字と読み取れる痣字が刻んである。
 ぶきみだ。どことなく恐ろしい。
 が、気味の悪さを上回る引力もある。
 吸い寄せられるように喉を上擦らせ、声色を甲高くさせた。
「い、いつから? 事故った……んじゃないよな、そんな時間なかったよな? 何をどうしたらこんな……。こんな、左右で目の色が違うぞ、骸!?」
「オッドアイと呼称するそうですよ」
 綱吉の頬をむにむにむにんと揉み込みながら、骸がそのオッドアイを半目にさせる。
「……朝、急に目が痛くなった。鏡を見たら紅くなっていた。事故や病気で目の色が変化するケースもあるにはあると聞いてますが、僕のケースは違うようですよ」
「いつの間に病院行ってたんだよ」
「何度も、学校から通ってますけど? どこぞの誰かと外食してばかりの誰かさんは知らないかもしれませんが」
「そーなんっ!? 何だよイヤミっぽいな!?」
 条件反射のようにツッコミしてしまうが、綱吉は頬をむぎゅむぎゅされようがオッドアイとやらを凝視しまくった。
 特大のルビーのようで、そのうえ、生命の芽吹きに満ち満ちている人間の瞳である。
 きれい……、と、素直な感想はそれだ。
 さすがに感想は喉の奥にしまった。神妙に質問する。
「視力はあるのこれ」
「ある」
「青く、戻れないの?」
「さあ?」
「さあ、って……お前の目だぞ!?」
「そうですがねぇ……」
 顔色を失ってから、ふと綱吉は六道骸の全体へと意識を移した。
 そこで、ようやくの気づきを得た。
 能面のようなのっぺらな無表情。義務的な眼差し、義務的な口調、義務的な……。
「…………」
 沢田綱吉は、器用な男ではなかった。
 青褪めてしまい、気まずく自分の唇を舐める。
「え、……っと。……ごめん」
 浅く息を漏らし、骸が自らの襟足の毛あたりをがしがしと掻いた。乱暴に。
 素っ気なく情報は継ぎ足ししてきた。
「先週。君、体育館で一人で清掃を押しつけられてたでしょう? あんとき、僕が荒れてたのわかりませんでした?」
「いや、おおむねいつも通りかと……てっきり……」
 綱吉も同様に、首の裏辺りをぽりぽりと掻いた。冷や汗が噴出した。
「ご、ごめん。ゴメンって。オレが興奮してちゃおかしいよな。うん。ていうかお前は学校に普通に来ててイイのかよ」
「僕にどうしろってんですか」
「あの、ほら、検査……ほら、一日がかりでやるよーなやつは? 人間で犬になるよーなやつ?」
「人間ドックですか」
「それ!!」
「まだ、受けてませんけど……」
「な!! 受けてこいよ!! 今日は!? あ、じゃあ明日行けよ、すぐ行った方がいいって!」
「……異常な状態であるのは僕が一番よくわかってますよ。君が慌てふためくまでもなくね」
 へそを曲げたままで骸が呻く。
 綱吉はもどかしさに奥歯を噛んだ。うまく言えないが、まるで自分の背中にチリチリした蛍火を点けられた気分だ。
 正しい説得の仕方なんて思いつかず、なんだか詰めが甘い気がするから率直にその点を非難した。
「お前、気づかないうちになんかしたんじゃないか? オカルトでもいいよもう、お地蔵さん蹴ったりとかしてないか?」
「してないです」
「あり得んのかよそれで! 何もしてないのに目の色が変わるかーっ!! なんかあるんだろ!! 痛くないってのも変だろ、失明でもしたら取り返しがつかなっああぁああああんで首締めてきてんのぉおおおおおおおっっ!?」
「……ここにネクタイがあるから、でしょうか……?」
 制服ネクタイの結び目を奥へとスライドさせて、半眼の骸が物理的に口を黙らせようとした。
 骸の眉目はぴくぴくと神経質に痙攣し通しでもある。
 幼馴染みを苦しませてから、唐突に突き飛ばした。
「っだあ!?」
 尻もちついた綱吉の膝に、眼帯が放り投げられる。
「やっぱりメンドくさい話でしたね。僕だって知らない――、何度も言わせるな!」
「げほ、げほっ! ……む、むくろ、……この、理不尽男っ……!」
 喉をおさえて深呼吸を弾ませる。綱吉は恐れおののいて骸を仰望した。
 美術準備室の鍵を手の中でちゃりちゃり言わせて、さっさと出ろと要求してくる。綱吉は混乱しながら退出して、ちょうどそのときに次の授業のチャイムが鳴った。
「…………、あ、おい!」
 しばらく、無言のうちに見つめ合ったが。
 骸は背を向けて階段を上がった。
 綱吉はかける言葉が見つからず、その場にしょんぼりするようにして取り残された。

 

(……や、オレ……ダメツナだったわ……)
 カチカチカチカチ、パソコンの前でマウスをクリックさせながら、沢田綱吉は独りごちる。
 混乱のピークが過ぎて、急激な罪悪感が胸中にとぐろを産み落としていた。
 骸は――、骸なりに、病院に行って治療を試みて、彼なりになにかしらやっていた。そんな彼に今さら言うにしては……確かに、デリカシーに欠ける発言ばかりだったような……。
(実際、怖がってるのはアイツだよな。右目があんなんなっちゃって――)
 6限目の授業は『情報』である。であるがしかし。
 課題はほっぽり出して、ネット検索に熱中していた。
(――『オッドアイ』――、って……?)
 左右で眼球の色が異なっていること。猫の写真。少数ながらもそんな人々の写真。
 さらにはコスプレ写真やアニメキャラなど……、
「六道センパイ、見た!?」
「闇の力に目覚めたらしーよ」
「――――」
 カチ……、マウスクリックが止まる。
 ナナメ後ろに頭をまわした。女子が肩を寄せてなにやら調べている。
 目を輝かせて画面に食い入る、その表情は『各国の世界遺産を調べてみよう!』なんて課題に対するものとは思われない。前の席を覗けば、男子すらも瞳が色違いの猫写真なんぞを開いている。
 気がつき、使用しているパソコンの検索履歴を探った。前の授業で誰かが検索したワードが出てくるはずだ。
 案の定、そこには『オッドアイ』、『目の色』、『病気』なんて単語がずららーっと並んだ。
(んっなあああああああああああ!?)
 驚愕する綱吉の後ろでも、また新たに噂の感染が始まった。
「なに、なにやってんの? 皆」
「知らないの? 会長だよ! 目ヤバイんだって」
「そうこれこれ、オッドアイ! ってやつなんだって」
 小声で、しかし盛んに言い交わされる。なに? なに、どういうこと? 自習時間は生徒会長に乗っ取られたようなものだ。
(そ、そういえばアイツ、準備室に眼帯捨ててったわ! ら、裸眼で出歩いてっ――)
 ざわ、ざわざわざわざわざわ……っ。
 噂話の水位にあっという間に首まで沈んでしまい、綱吉は今度こそ、こころから六道骸を気の毒に思った。ホームルームが終わってすぐさま下駄箱に走った。
「!」
 と、大混雑がある。
 三年生の下駄箱のところだ。
 明らかに人の密度が違っていて、妙に熱気を含んで盛り上がっている。黄色い悲鳴までもが聞こえた。
「ひえっ……っ、す、スンマセーン、通ります、通りますぅうっ!」
 どうにか、掻き分けて中心にいるだろう男の元へと急行する。
 果たして彼はそこに居た。
「骸っ!」
 紅色――真っ赤な紅い右目と、真っ青な蒼い左目で出来上がったオッドアイが、後方の綱吉をふり向いた。
 原色のコントラストが為か常よりも睫毛が強調されている。やたらと美男子的なムードが漂う。
 もとから異国情緒のある少年だったが、もはやどこかのお伽噺の住民のようで人外の感じがして強烈だ。
 その目に正面立って相まみえて、綱吉ですら喉が窮屈に引っ込んだ。凄い目の色だ。
 ……だが、当の六道骸本人は、くたびれた顔色だ。
 綱吉の姿に気づくと、いつものように、ふっとわずかに眉目の緊張を解いた。だから綱吉も飛びだしてすぐ、指を突きつけてツッコミができた。
「あ、アイドルかぁあああああっ!! オマエっ!!」
「こんな状況下で疲れるだけのツッコミをどうも」
 皮肉そうに苦笑するが、骸は片腕を伸ばして綱吉が懐に入れる余地を作った。
 そそっとそのすきまに入り、きゃあきゃあと熱狂する女子たちの声に対抗して大声を張り上げる。
「お、――お昼は、ごめんな! 骸、……ウチに避難するか? ひとまずは」
 骸先輩! なにがあったんですか? 目は大丈夫なんですか?
 綱吉が気安く話しかけた、それがトリガーになった。一斉に周辺の女子や男子が話しかけようとする。
 骸の声は、ひときわの小声だった。
 が、綱吉はちゃんと聞き分けができた。鼓膜ではなく、脳みそが聴いたような感じだ。
「きみんちに行く……」
 アイコンタクトを通わせた。
 そして綱吉は人垣を抜けてダッと走り出し、遠回りして自宅へと帰った。どこをどう抜けたのやら、六道骸は先に到着していて、スパイよろしく沢田家の敷地にて塀の影にしゃがんで隠れていた。
 家を開けながら、綱吉は半ば呆れながらオッドアイをしげしげと見上げる。
「どうやってあの人数を撒いたんだよ? お前」
「蛇の道は蛇だ。色々と道がある」
「そーやって変に気取ってると余計に騒がれないか? オマエ……」
(にしても、凄い目の色だな。本当)
 乱雑に革靴を脱ぎ捨て、骸は馴れきった所作で玄関をあがる。
「べつに。悪魔降臨も異世界転生も前世もなーんも興味ないですよ。僕はね」
「一体、どんな話題になってんだよ!」
 控えめに合いの手は入れておき、綱吉はスクールバッグを手探りした。「はいこれ」言ってプリントアウトしたコピー用紙を骸へと差し出す。
「授業のついでに……。なんかの足しにならんかな」
「ネットから?」
 オッドアイがしなるように細くなる。骸は本当に特別な美少年のような男に変わっていた。
「……」綱吉ですら、ちょっとどきどきする。
 自分をたしなめるつもりで、早口で弁明した。
「汚名挽回ってな。オレでもちょっと調べるくらいはできんだぞ」
「汚名は返上してもらいたいもんですが」
 苦言を呈しながらも自分のスクールバッグをおろし、コピー紙の一枚目をめくる。
 オッドアイは動く宝石もかくやの美しさがあった。
「……青から赤になるって話は出て来なかったんだけど……。マンガとかアニメならありがちな設定みたいだけどな。現実にあるとしたらアルビノってやつで」
「血液の色がまんま眼球に出ている、って言う話ですね。アルビノによる色素欠乏。しかしそれでオッドアイとは説明はできない」
「なんだ。よく知ってるんじゃん」
「そりゃ僕も調べますし。というか、この二時間でこのウェブサイトは二十回は読まされましたが? 女子やら後輩に」
「んげぇっ!? マジで!!」
「ほら……」
 骸が気乗りしないふうにスクールバッグからばさばさと紙の束を出していく。
 後じさりして綱吉は震えた。
「み、皆、結局は同じトコに辿り着くってことかぁ!?」
「インターネット広しといえども狭し、ですねー。使う人間の側がキャパに限界ありますよ」
 さりげなくも骸らしいイヤミを呟き、骸は指先を右目の下に這わせる。
 紅い目玉は左側を覗こうとして、そして棒立ちしている綱吉へと到着する。飄々として骸は綱吉をフォローするようなことを言った。
「ま、今のところは視えてますよ。君はもうそんなに気にしないように」
「……役立たずでごめん……」
「なんですか? 気持ちだけでも充分だ、うれしいです、そんなふうにお礼を僕に言って欲しかったんですか?」
「あ、あのな、オレ、まともに心配したんだぞっ!? 本当だかんな!」
「くははははっ」
 面白そうに苦笑して、眉宇を寄せるその姿がいつもの骸だった。
 綱吉はようやく息をほっとこぼせた。
「……それにしても骸の目の色ひとつで……どんだけフィーバーしてるんだよ、みんな」
「君だってそんなに人のこと言えます? ま、誰でもちょっと優しくするぐらいで媚びたり懐いたり、外見変わるだけでも好き嫌いが変動しますよ。そんなものだ」
「眼帯、新しく買ってこようか?」
 それにしても、顔立ちが西洋っぽいせいかバケモノじみたオッドアイが妙に似合ってしまっている。
「いいですよ、別に。つけてない方が楽なんです。魔王だ、悪魔など言われようが」
「またお前、変な伝説が増えるぞ?」
 苦笑する。思うことはたくさんあった。
 その一つに、先日、ガイに泣きついてしまった自分の姿がある。あれは――、ガイさんとオレの年齢の差があるからこそだよなぁ、なんて思いもするが、感銘を受けたのは確かだった。
 言ってはおこうと思えた。ガイは、そうしたら綱吉を受け止めてくれた。
「あの。オレで役に立てるなら、ちょっとはがんばれるよ? ダメツナだけど」
 ぎょっとして骸が綱吉を見つめた。一寸の沈黙。
「――……、いえ、君に何も言わずにいたのは、……言っても仕方がないから、です。それだけの話ですよ」
 細切れの声が、区切ってしばしの間を挟んだ。
 悩んだ様子だが、結局は続けた。
「役には立ってますよ? 君。わざわざ言葉にされなきゃ自信がもてないなんて、だからダメツナなんですよ」
「なんだよぉ。オレにはもっと早く教えておいてもよかったじゃん?」
「あんなに狼狽えておろおろしておいて?」
「すっげー色してんのはホントだろ! びっくりしたんだもん」
「屁理屈ですね。ガキです」
 小休憩を終えて、骸がスクールバッグを肩に引っかけ直す。
 その耳がにわかに赤く色づいているのを綱吉は見逃さなかった。
 同じく、茜色に頬っぺたを染めているが。
(……変に屈折してるやつが照れてるとこ見るの、なんか妙に……照れるわ!)
 脳裏に、秘密裏にツッコミした。
 綱吉は、簡単に着替えてから骸に続いて六道家へと移動した。玄関にて、従兄弟と妹が驚き、兄のガイも姿を現わした。
「ん〜? これは、ゾンビですか?」
「出血にも見えますねぇ」
「骸おにーちゃん」
 従兄弟と兄を押しのけて妹が胴体に抱きついている。
 いくらか表情を困らせつつ、骸は事情をかいつまんで報告した。
 翌日。綱吉は、骸から少し離れて登校した。
 朝の白い光が降り注ぎ、それ以上に白熱する好奇の眼差しが降り注ぎ、傍目にも六道骸は大変そうだった。
 さながら、歩く見世物小屋、歩くムーブメント。
 生徒会長! どこからも声がかかった。
(今までも人気あったと思うけど……、次元がちゃうなこれ)
 綱吉は、汗してちょっと遠巻きにちょくちょくと覗き見する。
「先輩!! トラックに撥ねられて右目に後遺症が残ってるってホントですか!?」
「俺、代わりにノートとれるぜ、六道。遠慮すんなよ」
「どうしたんですか骸せんぱぁい!」
「骸さま。お写真、一枚、いいですか……!?」
 きゃいきゃい、わいわい、雑踏から後頭部の房が飛び出ている。
 骸はあくまで生徒会長として、丁寧に断ったり礼を述べたりなどをしていた。綱吉はなんとなく釈然としない。
(こーなると前っから骸の追っかけしてた連中のがまだマシかも……。新しい奴らはなんなんだ? ミーハーなんだからなー、もう)
 今、大盛中学校に通う誰にしても、六道骸は注目の物件らしい。
 生徒どころか、教員までも骸を呼び止める。
 そしてオッドアイを見る。病気か? 大丈夫か? と、骸が確実に聞き飽きている質問を繰り返した。
 綱吉はちょっと自分をかえりみて反省などもする。
 いつの間にか、オレも骸のことばっかだな――、自省のついでに思い知る。
(……そういえば許嫁なんだっけ、オレたちって……、)
「綱吉!」
「うわ」
 上履きに履き替えている最中だった。突然に名を呼ばれて心臓が跳ねた。
「な、なっ、ど、どうした? 骸、職員室行ったら今日は人間ドッグなんだろ?」
「『く』です。ドック。ドッグじゃ犬でしょうが。先生との話は今終わった。ちょっと書類出すの手伝ってくれませんか」
「え? オレが?」
「君が今、いちばん僕に興味がない人間ですよ」
 はは、と冷笑まじりに言えるこの男、本当に冷血漢だな……などと綱吉はちょっと思う。あんなに持て囃されても当人は悪い印象ばかりらしい。
 病院での一日検査は昨晩、六道家での家族会議で決まったことだ。
 ところが、
「病院はヒマでしょうから。前から見てくれとは頼まれてたんですよね。まぁ来期の予算案なんて僕は卒業するから無関係なんですが」
「おっまえ、予定を詰めまくるタイプだよなぁ……」
 生徒会室でいくつかのファイルから表を抜き出し、新たにファイリングを済ませる。
 綱吉は階段でお別れだ。
 昨日からのこともあり、綱吉は一個年上の幼馴染みにかける言葉を咄嗟に考えあぐねた。
 ここは、ここは……、ここはひとつ。
(気の利いた……ことばを)
「き…気をつけて、な」
「……」
 骸は、どっちかというと、綱吉が赤面していることに驚いている顔だ。
 汗して頬を掻く。あー、喉を濁らせた。
「びょ、病院! いってらっしゃい!」
「あ、……ああ」
 骸は綱吉を二度見する。
 一度目はさっと見返して廊下に戻ろうとするが、やっぱり携えたファイルを抱え直してもう一度、ふり返った。
「――君、僕に同情でも? どうにも調子が狂う」
「なっ!! し、心配してんだよっ! 同情なんかするかよ」
「ほーお。綱吉、言っときますけど僕が不在の間に学校サボッたら殺しますからね」
「おっま!!」
「それじゃ」
 来期の予算案を暇潰しに持っていって、骸は授業を受けずに病院へと向かった。
 そうして放課後だ。陽差しに赤焼けした大盛病院の自動ドアをくぐり、綱吉は辺りをキョロキョロした。
 会計前の待機イスを探す……すると、骸よりも先に、見知った男性の姿が発見できた。
「ガイさん!」
「おや」
 骸の実兄となる青年は、エスカレーターの隣に並ぶ長椅子に落ち着いていた。
 彼ひとりだ。
 くるぶし丈の本革ブーツに、黒緑色のボトムスの裾が入れてある。Vネックのインナーとジャケットは真っ黒く、首まわりは今日も彼のお気に入りの千鳥格子のロングマフラーを巻いている。
 ホットココアのペットボトルを片手に、足を組んでどうやら弟を待っている。
 入り口から走っていく綱吉に笑顔を浮かべた。
「どうしたんですか、君まで」
「ガイさん。あの、お見舞い、オレ――、いや昨日の夜に断られたんですけどね。でも時間あるし。気になっちゃって」
「ああ、なるほど」
 たおやかに、千鳥格子のマフラーに顔を埋めながらガイは口角を上げた。
「骸は、本当は来て欲しがってる――そう思うんですね、綱吉くんは。なるほど」
「……えっと、その。いちおうですよ」
 つられて相好を崩し、眉をへにょっとさせながらも隣に腰かけた。
 スクールバッグは膝の上に寝かせる。
 午後。病院としては遅い時刻になっていて、エスカレーターに近寄る患者はいない。かすかに見える受付の女性ですら、こちらに後ろ頭を向ける始末だ。
 青年と少年はひそひそと声を交わした。院内は静かだった。
「ええ。保護者です。あれは生意気でも未成年ですからね。僕がデイモンにじゃんけんで負けました」
「あの。ガイさん」
「なんでしょうか」
 喉がつっかえつっかえになっても、ガイは物静かに気長に先を待ってくれる。
 視線は急かすわけでもなく、無視するでもなく、ただ時間経過にのんびりと身を置いている。
「……あの、ありがとうございました」
「…………?」
 にこっ。その顔のまま、ガイが不思議そうに目をほんの少し丸くする。
 綱吉はスクールバッグの端っこを握った。
(え、ええい。ふたりっきりじゃん! 今、チャンスじゃんっ!?)
 熱が急上昇して頬に桃色を浮かべる。顔面が発汗するような気恥ずかしさを飲んで、直に帰ってくる骸の気配も予感した。
 だから、今だ。早口になってしまった。
「ガイさんのおかげでオレ、ちょっと、骸と……なんていうか誤解がなく……仲良くなれた? 感じ、するんです。あ、幼馴染みだし、腐れ縁はずっとあったんですけど。それでもなんかちょっと、ガイさんのアドバイスのおかげで変われた気がするんです」
「……ぼくですか?」
 復唱するガイの蒼い双眼が、糸目状に細くしなった。
 そうして完全に目を閉じる。
 やや、沈黙してから、長い睫毛が持ち上がってガイは足元にある硬質な床板を見収めた。
 それこそ復唱に聞こえた。言い聞かせるような抑揚のつけ方である。
「僕は綱吉くんの味方ですよ」
「……へ、へへへ」
 直線的に心臓をバッティングしてくるような言の葉だ。
 綱吉は赤面して首元をすくめさせる。
 と、そんな綱吉の視界に、ガイの前髪がゆらっと漕ぎ現れる。
 切れ長の双眸がナナメ下から覗くようにして綱吉へと急接近している。
「……僕のアドバイスで、綱吉くんと骸の関係が変わったんですか? いつの話でしょうか……」
「え……、え? き、昨日、です」
 舌先を塩っ辛くさせながら、綱吉はなまつばを飲んだ。
「が、……ガイさん?」
 綱吉の本音は、ただ以前のように、以前と同じようにして大人の包容力で優しく受け止めて欲しかっただけだ。
 しかしながら、距離の近さのせいか、妙に脂汗が大盛制服のシャツの下に滲んだ。
 ガイの手のひらが綱吉の胸元に触れてきた。その指先を実直に凝視する。思いのほか、力が強いから心臓がどくんどくんと鼓動しているのが丸わかりだろう。
「どきどきしてますね。骸と……そんなに発展性のある関係が? 綱吉くん」
「…………っ? ……オレも頑張れるって……話、しました」
「それだけ? それだけの発展ですか? それは……、発展と呼べるんでしょうかね」
「え、た、多分、……はい」
「綱吉くん。緊張している?」
「……、は、ハイ」
 愚直に頭を頷かせる。それってこの体勢が原因じゃあーっ!? と、頭の片隅にて悲鳴はこだました。
 綱吉は喉をもう一度、ごくんとなまつばを飲ませる。
 汗は大挙して発汗された。いつの間にか青年は密着していて綱吉の胸にべったりと平手を貼りつかせて、その鼓動とリズムを逐一、計測している。計測されている気分がした。
 覗き込んでくる両の目は、研磨したガラス球のように美しかった。ふたつの青い目玉がそこにはある。
 綱吉は、首をわずかに上げてガイを覗き見、ますます赤面する。鼻がくっつきそうな近さだ。
 ガイの長い前髪がカーテンになって綱吉の視界をも阻む。そして目の色。
 その青みがまざまざと綱吉の眸子に焼きつく。
(…――懐かしい?)
 急に、郷土に焦がれるような、胸が苦しくなるような哀切に襲われた。
 理由はすぐに思い当たる。この青い目。そう、懐かしい。
 当たり前だ。だって、
(骸がオッドアイになってるんだから)
 骸とそっくり同じな青い瞳――
 心臓のリズムを計測していた指先がつと上昇して綱吉のあごを押上げた。喉首の真ん中を下方から、指がなぞり上げていく。
 綱吉を抱きすくめるようにしているガイが、穏やかに、だが静かに何やら口にする。
「無知蒙昧で愚かなのは変わらないのに――、昔っから」
「…………ガイ、さ?」
 額と額がやわらかに接着する。
 綱吉は汗が揮発すると錯覚するほど全身が汗ばんだ。
「!!」
(うわっ――)
「……天使」
 と、断言がなにやら甘く、囁かれた。
 驚くほど肺が圧迫される。綱吉は息もできずに耐える。見えない鎖が雁字搦めに四肢と内臓を縛めて綱吉からすべての自由を奪うようだった。何を言われているか――。理解が追いつけない、人智を超えた呪文かなにかが耳元に響く。
 静かな物腰でたおやかなのに、ガイには気迫がある。自由を赦さない迫力が。
「きみは、……解せないんですが――」
 甘やかに、ゆるやかに。
 尋問のような重低音が体内にこだまする。
「六道骸、好きになれるんですか? 許嫁なんて話ひとつで? ねぇ、綱吉くん。それだけ答えてくれれば……後はもう、いいですよ?」
「……がっっ……」
 口が酸欠からぱくぱくした。
 両目をきゅう〜〜っと瞑って綱吉は汗腺を最大限に開けっぴろげにさせる。
 が、がっ! 壊れたロボットのように悲鳴する綱吉の目尻に、ガイの節くれ立った指の関節部が触れる。目を薄っすら開ければ、甘えるような大人の男性の目つきがある。
 絶句し、今度は目が離せなくなる。物静かな院内にガイの誘い文句が浸透した。
「僕は、君に選んでもらえなかったんですか……?」
「――なにを、」
 数センチ先にある青い瞳が、ばっと後ろに離された。
「してる!? 綱吉、ガイ?」
 ガイの肩をわしづかみ、綱吉から引き剥がしているのはエスカレーターに移動されている少年だった。
 六道骸だ。
 一定の速度ですーっと一階へと運ばれている最中だ。
 だったが、身を乗り出すように片手を出しているからか、他に患者が見当たらないからか、エレベーターに運ばれ終える前に行儀悪く手すりを跨いで床に着地した。
 早速、綱吉に覆い被さっているガイを完全に引き剥がしにかかる。
 綱吉は心臓をばくばくと爆速に晒しながらも、おおげさに、朝見たまんまのニットベストにネクタイ、ブレザー制服姿の骸の名を勇んで呼んだ。
「骸!! 検査、おわ、終わったか? どうだった!?」
「――逃げちゃうんですか?」
 微妙に笑いを含んでガイが呟く。
 綱吉は長椅子から立ち上がって骸の方へと寄っている。
 綱吉がふり向くと、ガイも既に膝を上げて誰よりも高く背筋を伸ばしている。
 にこやかに、自らの指で胸を抑えてみせた。
「綱吉くん。やっぱり許嫁にふさわしいのは僕なのではありません? 僕のが優しいですよ。それに君の幼馴染みです」
 そんな彼に、その姿を仰ぎ見て、しかし綱吉は無性に胸が震駭している。絶句した。
 なんて、なんて冷たい目を……? 青い色に氷の層が感じられる。それはぶ厚く感情すら区切って分断しているようだった。
 長髪の青年は、そんな目をしながらたおやかに微笑んでいる。
「ね? 誰よりも愛していますよ」
「…っだ、ああだああっ!?」
 狼狽する綱吉がなにか反応するより先に、背中ががつんと殴られた。骸だった。
 思い返すなら、それは殴ってきたのではなく、肉体ごと制服をわしづかみされて後ろに引っぱられただけだった。
 骸が綱吉よりも前に立った。
 いささか驚くようだが、嫌悪が先立つのか強気な口調である。
「何勝手言ってんですか? その話はもう終わったでしょうが!」
「僕は納得したなどと口にしてませんが」
「ハア!?」
「綱吉くん。綱吉くんも、僕に好意があるでしょう?」
「でええっ!?」
 思いがけずに図星を突かれてまたも絶句する。
 骸が綱吉をふり向き、真っ向から視線がぶつかった。
「――あ、」脳裏が白く煮え立って咽喉は閉まる。
 バリケードのようにして骸の腕が綱吉の真ん前に突き出されている。形相をゆがめて骸がガイに怒鳴った。
「この子は僕の許嫁ですが!?」
「誰が決めましたか」
 間断なく尋ね返し、うすく微笑みを浮かべるガイ。
 綱吉は、骸の腕に戸惑いながらも、腕越しにガイに呻いた。
「お、親――が。決め、……ガイさん、……!?」
 と、中断して骸の反応に目が釘づけされる。
 あ然、正円に近く口をまん丸くさせて、綱吉は赤面している骸をガン見してしまう。ふいっと顔をそらされて俯かれると、先程の骸のセリフが脳裏に反響した。
(お――、おおおおおおいい、意識するなよ!! そこで!!)
 肌がそばだってきて、みるみると綱吉にも赤面が伝播した。
 な、なんでそんなに。なんでこんなに反応してるんだよオレたちは!
「む、――――…っ!?」
 気恥ずかしさに負けて、いつものノリでツッコミをひとつ入れようとする。と。
 気づけば、綱吉は骸に食ってかかっており、骸が嫌がって顔向きをそらしてもその顔面を両手でがしっと押さえていた。
「なっ! なに、する――」
 赤くなって骸が狼狽するが、綱吉は目を剥いて恐怖の表情に凝り固まっている。
「おい!!」
「あ、アホ、ですか? 僕はそんな気で言ったんじゃない! とりあえずの、」
「違う!! ちょ、眼っ!!」
「はっ…?」
「眼!! 数字がっ!!」
 顔面の、それも右目の側だ。
 そこに食いつかれていると悟って骸が後ろ手で制服のポケットを漁った。スマートフォンの電源をつけず、黒い鏡面に顔を反射させる。鏡の代用だ。
 無防備な表情など滅多にみせない、そんな六道骸が、綱吉の前で呆気にとられた。
「…――『五』……?」
「今だよ! 今! さっきまで『六』だ。でも今、もう『五』になってて――、おいお前、検査は!? どうだったんだ!?」
「……異常なし、でしたよ、……」
 呆然とする骸が、途方に暮れながらかろうじて答える。
 オッドアイの右目。赤い目玉は今や痣字を『六』から『五』へと変化させている。もはや怪奇現象のように。
 硬直する少年たちの前に、ガイが悠々と歩み寄ってきて、くすっと一笑した。
 そして一言、呟く。
「これは奇っ怪な」
「痛いか? なあ? 大丈夫か! お医者さんっ……お医者さん、呼んでくる、誰か、なんか変だよ。ぜったいおかしーだろ!? 眼んなかが動いてるんだぞ!? 目が、」
 ばん!
 真後ろにて、踏み抜くような音がした。
 綱吉を横切って飛び出してきたものは三つ叉に別たれた何か――刃に棒が連なる、長い槍だった。
 切迫した悲鳴が轟いた。
「――おにいちゃんどいて!! そいつ殺せない!!」
 綱吉には、スローモーションに感じられた。
 三つに枝分かれする剣。
 それを先端部に取りつけた、コスプレ道具のような長槍を両手に構えて六道クロームがガイに突撃していった。
 びゅっ! ばさっ! 大盛中学校のスカートが捲れ上がって白い太ももが露わとなる。後頭部の房がなびく。確かに、どう見てもクローム本人だ。
 突き、凪ぎ、びゅんびゅんと器用に繰り出される穂先での攻撃に、しかもガイは対応しきっているから珍妙だった。
 切れ長の両瞳を三分の二ほど眼瞼で覆って、ブーツを後ろに逃して、あるいは横に立ってと代わる代わるに動き、全ての突貫を避けきってみせた。ロングマフラーと長髪のしっぽがS字に捻れてくねった。
「…………?」
「――――なっ」
 わ! きゃあ!
 硬直する綱吉と骸に代わり、受付から悲鳴が上がる。
 後ろに、よろける綱吉は咄嗟に指に引っかかった制服ベストを握りしめた。幼馴染みの制服だ。
 幼馴染みは、綱吉の方角によろけて、二人揃ってたたらを踏んだ。
 視線は、ともに妹と兄に囚われている。
「……は? はっ? え。わ。わ、わあああああ……っ!?」
「…………っ」
 腰を抜かしそうになる綱吉に、骸が両手を貸した。視線はやっぱり兄妹にある。
 攻撃は、あるところでピタッと止んだ。クロームは喉をぜえはあさせて、両手と体をそれぞれ逆方向へとねじって槍を油断なく構えて後方に下がった。
 槍は切っ先を突きつけ、ガイの鼻先、数センチの距離にて三つ叉の刃が睨みをきかせる。
 警戒姿勢を保ち、大盛制服の美少女は、厳しく詰問した。
「――あなたは誰。正体を白状して」
「…………」
 ガイは、答えない。
 しかし嗤った。
 ふ、と眼窩ごと青目を奥へとくぼませて眉を八の字にさせて、この世の終焉でも見届けた後のような老獪な筋肉の解れ方で表情を微笑ませている。
 犯人が、突如、高笑いをするようなシーンに綱吉には見えた。
 ――彼が、あくどく遠回りになにやら肯定したとして、獰猛に据わりきった青い2つ眼があるとして、それでも綱吉はやっぱりわけがわからず、自分とはまったく関わりがない事象のように思えてならなかった。








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