「あー……。イイな。それって何味?」
「やらんぞ」
  ばきっ、がごんっ。
  背後から痛ましい音がする。綱吉は唇を尖らせた。
「お前からモノ取りたいってヤツは死ぬつもりなんだろうな。オレまだそこまでは」
  ばきばきっっ。ぼきっ。
「そこまでは……。諦めてないよ、ウン。多分」
  ごにょごにょとうめく背後では、怒号が行き交っていた。
「しぶといんだよ!」
「クハハハッ! ハハハ!!」
 三叉の槍とトンファーとが火花を散らす。それを近視の距離で見つめた金髪の青年がいた。
「油断は、禁物、ってなぁ」
  声音こそ能天気だ。だが、彼がムチを走らせるとビシャアンとビニール袋を叩き割ったような音がした。抉れたのはコンクリートであるのだが。
「ロマーリオさん、オレにも何か買ってきてくれたりとかします?」
「ボスを置いてはいけねーなぁ」タバコを片手にした男性が首を傾げる。リボーンはにやにやとした。
「減量中だろ、ダメツナめ。これはレオンに頼んだんだ」
「マジ? いや……、だってさ。いつの間にかみんなで生徒そっちのけでさ……もうどうでもよくない?」
「ダメツナらしい発言だぜ、まったく」
  ちゅるるる。渋茶色の液体を吸い上げつつ、赤子は声を低くした。
「ちょいと発破かけすぎたかな。一番デキたヤツはツナを一晩好きにしてもいいっつたらこのザマか……」
「オレもそんなヒマってわけじゃさー、いや実際ヒマだけどー」ブツブツと呻く綱吉だが、ふと、気がついたように半眼をリボーンへ向けた。
「今、なんて言った?」
  ちゅるるるるるっ。
「なんか言っただろ! なんて言った――?!」
  ちゅるるるるるるるるっっ。
「チッ」金髪の青年、ディーノの舌打ちが響いた。
  黒い影が二つ、宙を回転した上で着地した。一歩を踏み外せば地上へとまっ逆さま、そんなギリギリの場所だ。二人の少年は物怖じも無く互いの武器を構えなおしてディーノへと向けた。
「さすがに厄介だな。恭弥、一応オレってばお前の先生でもあるぞ?」
「情に訴える気? 無駄だね。あなたの息の根を止める絶好のチャンスだ!」
 ヒバリがディーノに向けて駆け出す。やや遅れた影は六道骸だ。
「!」槍を掲げた骸は、がぎんっっ! と鋭く槍を叩きつけた。ヒバリを狙った一撃だ。右に傾いだヒバリの身体を目指して、ディーノが鞭を振るう。再び跳躍して、ヒバリはディーノの背後まで回りこんだ。
「くっ――」
  鞭を振るおうとしたが、腕をあげる前に骸が槍を振り下ろした。標的がディーノに変わっている。
「クフフフフ。貴様ら同時に屠るにはよい舞台でしょう! 青空の下で死ねるなんて光栄だっ!」
「くそっ。跳ね馬をナメんじゃねーぞ!」歯を食い縛ったディーノは一瞬で手首を捻った。ぐるんっと鞭が骸の片足に巻きつく。少年がバランスを崩した一瞬のあいだに、ヒバリが身体を割り込ませた。ディーノの眼前にトンファーが迫る。
「その台詞、そっくり返す!」
「〜〜〜〜っ!」
  ひゅんっ。次の一瞬には、三人は互いに充分な間合いを取っていた。勝負はまだ決着がつきそうに無い。その様子を肩越しに振り返りつつ、真っ青になりつつ、綱吉がオロオロとしていた。
「あああっ。よく見ればこの場所って逃げ場が無いっ。嵌められた――?!」
「のこのこ着いて来たのが運の尽きだったな、ツナ」
「悪役かお前はっ?!」
  半ば条件反射でツッコミしつつ、綱吉は頭を抱えた。
「あー、もー。何でこんなに不幸なんだっっ」
「愛されてんだろ。メデテーな、あっちの三つ巴の中心だぜ、お前」
「嬉しくない嬉しくない!」
「テメー入ると四つ巴だな」
「嬉しくないってば!」
  指折り数えるリボーンに叫び返した。
  背後からは依然として音がする。どがっ、ばきっ、どう考えても健康的にも精神的にもよろしくない音だ。さめざめとする綱吉の横に歩いてきたのはロマーリオだった。キャバッローネファミリーの人間だ。
「……買い物にゃいけねーが、飴玉でも食いますかい?」
「あ、ありがとう……」
  人の優しさはこういうときこそ身に染みる。
  だがしかし、綱吉が受け取ることはできなかった。
  ロマーリオの背後で、骸とヒバリとが末恐ろしい顔をして綱吉を睨みつけたからだ。キャバッローネのボスたるディーノは、さすがだ、とでも言わんばかりに誇り高そうな顔をしているが。
「…………」ロマーリオの申し出を辞退して数分後、頬杖して空を眺めつつ、綱吉が言った。
「おまえ、絶対、内心でオレの不幸を楽しんでるだろ」
  ちゅるるるるっ。若干、ストローで吸い上げる勢いが増した気がした綱吉である。


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*NOAN*」の、のなっさんさんから美麗イラストいただきました!

思わずSSを付けてみちゃいました。イラストの素晴らしさを半減してないとよいのですがっ。
骸とヒバリとディーノ+ツナな四つ巴イラストですよ…!
この組み合わせで見たいーと言っていたら本当に描いていただけましたv
ストローで呑み中のリボーンも疲れ果てたツナの表情も(笑)、
バトル中な三人も! 格好よくて惚れ惚れですー!v
さりげなく骸さんにノーパン疑惑かけるところも凄いですぜ(笑)
ホントに感動です。美麗絵ありがとうございましたーv

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