「ヒバリさん?」
「声が……、するみたいだ」
黒目をまたたかせて少年がうめく。綱吉も目を瞬かせる。
「声? しないですよ、そんなもん」
「…………。耳、悪いね」
「んなっ?!」
フッと口角をナナメにして、雲雀恭弥は肩を竦めた。
「あいつもさぞかしイヤだろーね、キミじゃなくて僕がわかっちゃうんだもんね。まあこっちは対策しやすくて楽なんだけど。綱吉、そこから二歩下がって回れ右して一歩進んで」
「は、はああ……?!」
ヒバリは腕組みして小首を傾げる。ギクッとした。綱吉は慌てて言われた通りに動く。すると、
ずざぁああああ! と、派手にタックルをすかしてアスファルトに倒れこむ人影がいた。
「おのれ、雲雀恭弥!!」
「僕の五感は人間並みじゃないからね」
「なななにアッサリやばいこと言ってんですかヒバリさん?! つーか骸!!」
六道骸はアスファルトで擦った額を抑えてうずくまっていた。オッドアイは目尻を潤ませている。
「痛いです……。綱吉くん、舐めて」
「何でそーなる?!」
「君に抱きつこうとして失敗して痛い目にあったんですから直前に動いた君に全責任があります責任とってください僕のお嫁さんになって心に空いた穴を埋めてください」
綱吉はいささか黙る。どこから突っ込もうかと考えたために反応が遅れていた。その綱吉の横で、ヒバリがトンファーを両手に握り締めて振り被っていた。
だんっ! と、骸が跳ねる。先程まで泣きまねしていた人物の面影は捨てて骸は高笑いをした。
「まあ、そんな些細な話は置いておいて!」
「おまえが複雑にしたんだろ?!」
綱吉が両手をワナワナにさせる。
「いやっ、て、ゆーかツッコミいれさせろ! おかしかっただろ、今! 何だよオレ男だし抱きつくなよ?! てめーいいかげんにっ」
「つまり僕は雲雀恭弥をそろそろ輪廻の底に突き落とすべきだということ!」
少しも話を聞かずに三叉槍を組み立て、六道骸が両手で振り被る。槍の頂点、剣の部分が陽光を反射してキラッと光る。上等、と、薄く呟いてヒバリが飛び出した。ぎぃん! 交戦は素早い。綱吉は目で追うのがやっとだった。
「あわわわわ……」
しかし五分で気が付く。
「なんで律儀に付き合うんだろ? 帰ろっと……」
その場で踵を返して小走りで抜けていく。綱吉は、まあ、あまり自分を不幸だとは思っていないので救いがあった。
おわり
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