この世の地獄
この世は地獄だとあなたが言いました。わたしはそれを否定したいと願いました。いつか否定すると決めました。あなたと対等になれて、あなたの力になれた日に言おうと決めました。
もう一人のあなた、あなたの次に好きなあなたは早かった。否定してしまった。わたしは呆然としてしまいます。
わたしが言いたかった。わたしがあなたの大事な人になりたかった。わたしとあなたは似たもの同士。似合いの人になれたはず。
「地獄ですね……」
あなたはよく遠いところに飛ばされます。わたしは付いていきます。あなたの代行人だから。
日本の聳える方角を見据えて、あなたは夜の海を眺めます。波が引いて、アブクをつれて戻ってきます。あなたは言います。あの言葉を。
「この夜は地獄ですね。会えないなんて」
あなたは変わってしまいました。わたしの知るあなた、彼が知らずにいたあなたは段々と消えていきます。わたしはそれを喜ぶはずなのに嫉妬しています。わたしでは出来なかったなんて。
「骸さま……。そろそろ、ホテルに。戻りませんか」
「もう少し。クローム、空って繋がってるでしょう。この空はボンゴレのところに届いてますし、この海は日本に届いてる。それって素敵じゃないですか」
「素敵だと思います。でも骸さま、風邪を引いちゃう」
「そんなにやわじゃありません」
くすくすとしながらあなたは海岸線を歩く。
サンダルに波が被っては消える。被っては消える。わたしは、あなたに被さってひとつになりたかった。
わたしは海に近づくことができない。もう、あなたのようにあなたのあの人すべてを愛することができないから。
「骸さま。もう、帰りましょう。明日も任務があります」
「もう少し」
空を見上げる優しい瞳。あなたは、変わってしまいました。嬉しいはずなのに悲しい、それがまた悲しい。
愛しいあなた、この夜が地獄であるならば、別の夜の地獄はどこに消えたのですか。わたしの中に吸い込まれたよう感じます。この夜は地獄です。
おわり
>>もどる
|