湿光
テラテラした光り方をするのは――、いや、しているように見えるのは、大気が過剰に湿り気を吸い込んでいる上に部屋の喚起をしていないからだ。
そう判断して、六道骸は真っ先に窓へ向かった。
「あ? なに? 部屋がくさい?」
一ヶ月ほど掃除をしていなかったので、沢田綱吉はギクリとした。右手にはコミック本。
起き上がった彼に骸は冷ややかな眼差しを向ける。
「そうかもしれませんね。で、アルコバレーノはどこですか」
「いるけど……。昼寝の邪魔すると、怖いぞ」
仲間のよしみとして綱吉は警告する。
家庭教師は、アロハシャツにサングラスをかけて寝転がる。ハンモックの上だ。六道骸は、複雑そうに床と天井に張り巡らされた銀糸を睨む。
「罠ですか。慎重ですね」
「リボーンは大抵そうなんだよ」
「君が信頼されてないだけでは?」
ズバッと痛がるところを突き刺して、骸が振り返る。
窓を大きく開け放ちながらだった。
六道骸への苦手意識は強い。沢田綱吉は口角を引き攣らせて首を振った。
「殺し屋だからさ! クセなんだよ。それにOKだしてるオレがリボーンを理解してるって話だろ?!」
「詭弁がうまくなりましたね」
侮蔑を堂々と口にして、
「じゃあ、待つとしますよ。お茶は新茶しか呑みませんから。だしなさい」
「うげっ?! 居座る気か?!」
「用が終わりませんとね……。帰れない」
唇を窄めていく。半ば無意識で六道骸は声を潜めていた。
その理由は何か?
家庭教師リボーンの眠りを妨げないためである。
どうしてそんなことをする必要が?
それは、深く考えないままで、六道骸と沢田綱吉とは忌まわしげにひっそり相手を睨んだ。互いに同時だったので、自然と、視線はぶつかり合う。
「……新茶」
「時期的に無理だっつの!」
「高級なものなら何でも」
「それが本音か?! 何てヤツだっっ」
フゥ、と、密かにため息して骸は沢田綱吉の背中を見送る。
その首筋がテラテラと光っていた。
おわり
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