はぴば
「よーし、時間がないから急いで祝おう! 骸さん、前にぽつっと寂しいって言ってたよな? だから、ハイ! ケーキ買ってみました。おめでとうございます」
差し出された箱を前に骸は無表情になった。つまらなさそうに綱吉を見る。黒曜中学の校門前だ。
「舐めたこというとヤキいれますよ」
「……ケーキ受け取れよ!」
「ほう。クローム」
横から出てきてクローム髑髏が受け取る。
綱吉は安堵の息を吐き出した。リボーンから告げられたノルマはクリアだ。守護者の誕生日は祝えよ、ボスなんだから、とかなんとか。
「じゃ、そういうことでー」
「待ちなさい」
骸が並中のカバンを摘んだ。人差し指と親指だけで摘んだ割りには綱吉がよろめいて重心を崩すくらいの力があった。引き攣りつつ、振り返る。
「なんだよ? なんか、この学校怖いから早くいきたいんだけど」
先程から視線を浴びてばっかりだ。並盛生は珍しいか、あるいは、風紀委員長のせいで有名らしい。ずるずると引き摺られて、背中と腰に手を当てられて綱吉は心持ち首筋を反らした。
「? まだ何かあるんですか?」
「沢田綱吉。この超セレブな財力がある六道骸にコージーコー○ーのケーキで済まそうっていうその魂胆が我慢なりません。祝ったどころか侮辱なんですが」
「ええ? 無茶いうなよ。中学生の財力なんだぞ、こっちは!」
「…………。提案です」
耳に口を寄せてくる。
言いにくいのか。合点して綱吉も背伸びする。
「足を開いてください」
「…………」
意味がわからずに綱吉は硬直する。
その耳を、舌がちょんとこずいた。心持ち首を反らせる。
「じゃあ、いきましょうか。千種、手配を。ちょっと祝わせてあげてきます」
「え? ああ? ええええ?」
きょろきょろとして、引き摺られつつ、綱吉は沈黙する。経過を思い出してみる。繁華街に入って、ホテルを前に骸が足を止めた。にこりと振り返る。その笑みで、ようやくわかった。
「いっ……うぎゃああああ!!!」
「今更逃げますか?」
いやらしく両目を細めて、骸は得意げだった。
この日一番、楽しげな笑みでもあるが、綱吉はそんなことは知らない。
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