こたつ怪談
<中間>

 
 綱吉はしばし語り終えた六道骸をジッと見た。
 彼は黙々とアイスを平らげる。もうすぐ全て無くなってしまいそうだ。
 ようやっと口が開いた。綱吉の声は動揺していた。
「ツナって言わなかった?」
「気になりますか」
「そりゃ陰湿なホラーの主役が俺と同じ名前だったらイヤな気分にもなるわ!」
「くはははは」他人事のように骸が空笑いをした。
 綱吉は邪険に骸を睨みつける。
「これってもしかしてイヤガラセか何か?」
「まさか。僕がそうする理由なんかないでしょう」
「えええ……」
 ありそうだ。直感的に感じて、綱吉は眉根を寄せた。
 ザクリと腹立ち紛れにアイスの中に木ベラを突き立てる。と、――なんでそんな直感が? と、綱吉は自らに向けて問いかけをした。
「ん? 骸クン、俺のこと覚えてるよね」
「どうしてそんなこと言うんです。忘れてなんかいません」
 オッドアイがすうっと細くなった。
「…………?」
 綱吉の視線はアイスへと落ちる。
 淡いミントブルーだ。胸で渦巻いていた奇妙な感触が、突如、実体を得たとばかりに喉元に競りあがった。競りあがったままに、綱吉が目を丸くする。
「ああ。なんか違和感あると思った。このアイス……、味が変わってるよね」
「というと?」
「味がよくわかんない。何味? ミントっぽい色してるけど……、ミント? これが? こんなザラッとした――氷のつぶ、みたいな。砂みたいな小さいモノ混ざってるよね」
「砂ですか」
 骸が僅かに顔を曇らせる。
 慌てて、付け足した。
「いやっ。変わった味だと思っただけだけど。オイシイよ」
 それはよかった。骸は感慨もなく呟くと、話を戻した。唐突だったので綱吉は面を喰らった。
「綱吉さんの名前を使ったのは臨場感を増すための演出です。こう言えば納得しますか?」
「え? あ、ああ」
「次はどうでしょうかね」
「つ、次もあるのォ?」
 ウンザリしつつ、綱吉はハッとした。
「ていうか、よく俺のあだ名がツナってわかったね」
 数秒の沈黙の末、低い声が囁いた。
「簡単な推理ですよ。ぼやぼや食べるとアイス溶けますからね」
 骸が手にしたアイスカップは、既に底が見え始めていた。