*ちょろーっと放った小話やら小ネタやらを収納してる箱です。何でもアリです。
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1つ目:三つ続きのどこか →骸ツナ+α
2つ目:三つ続きのどこか →骸ツナ+α
3つ目:三つ続きのどこか →骸ツナ+α
4つ目:執事骸ツナ →タイトルのままの内容・パラレル
三つ続きのどこか
六道骸、というのは誰にとってもよくわからない。
彼が偽名を使っていること、ニセの人格を演技していることは明らかだったが誰も気にしなかった。演技も板についてくれば本性と変わらない。
骸は一応初対面の人間にはそれなりに丁寧に対応する。礼儀も知っていて、知能においても戦闘においても相当の実力を持っている。これは使える人材だ、ということで、守護者連中の中でも骸は駆りだされることが多かった。
実に半年振りに骸と再会して、綱吉はあっけらかんと後ろ頭を掻いた。
「あれ。骸さん? うわー、そっくり。髑髏ちゃん、さすがぁ。ちょっと目つき据わってるのとか似てる! ホントに男みたいだよ」
ポン、肩を叩いて廊下を通り過ぎる。気楽な足音はすぐに聞こえなくなった。棒立ちになった骸が取り残された。
骸はいささかやつれて頬をコケさせていた。
不眠不休、三日連続の徹夜明けだ。ようやくリボーンからイタリアへの帰還を認められ、仕事が終わると速攻飛行機に飛び乗って今にいたる。
「…………」
「……え? 骸さま?」
しばらくすると、パンツ姿のブラックスーツに身を包んだ髑髏が歩いてきた。骸と同じ髪型をしている。頭の上に、髪の毛のふさを作って稲妻形の分け目。
「どうしたんですか! 骸さま? 骸さま!!」
「…………」髑髏が大慌てて骸の肩を揺さぶる。彼は愕然としていた。――と、硬直しきる彼から、ブチンッと何かが切れるような音がした。
「骸さま?」髑髏が目を見張る。
彼は、女の肩を掴み返した。
「くははは、はははは。僕の堪忍袋が切れた音ですよ」
「だ、大丈夫? 任務大変だった?」
「凪。今すぐ髑髏という名を捨てて千種と犬を召集しなさい」
「? どうして?」
骸は頑として言い放った。
「ボンゴレから離脱するからです」
ぎょっとする髑髏――本名は凪だ――に構わず、やれやれと骸はかぶりを振った。額に自らの人差し指を押し当てる。頭痛を堪えるような仕草だった。
「僕がもう少し残酷で執着とかしない人間だったら彼を殺すんですけど。とりあえず、今はそれだけです」
「何があったんですか、骸さま」
恐々と尋ねる髑髏だが、骸は首を振るだけだ。そうしながら踵を返す。
髑髏は目を丸めた。
「骸さま、どこにゆくの?」
「ちょっと、出発前にボンゴレをレイプしてきます」
ちゃっ。手をあげるような合図をして、骸は平坦な声で告げた。
「召集、できたら僕の部屋に集まってください。今から三時間後です」
「…………。わかりました」
色々と驚くところがあったが、骸が怒ってることはわかったので、髑髏は大人しく引き下がることとした。この屋敷は気に入っていたので、今回の英断は彼女にとってもいささか残念なことではあった。
「くふ、ふふふ、ふふふ……」
常軌を逸したような引き攣り声で哄笑しつつ、彼はボンゴレ十代目が消えたのと同じ扉の向こうに消えた。数分の後、悲鳴が聞こえたが、髑髏は知らないフリをして出かけていった。
イタリア全土を揺るがす大抗争がそれから一年間ほど続いたが、こうした些細な出来事に端を発していると知る人間は限られている。この三人だけだ。
おわり
三つ続きのどこか
「行き場所ないならオレのとこくる?」
病室でぐったりしていた少年の前に現れると、沢田綱吉は心細そうに俯きながら呟いた。先日、彼が額に炎を生やして水牢の中に突っ込んできたような記憶がおぼろにある。
右腕に点滴の針が刺さっているため、うまく動けないが、それでも骸はなんとか上半身を持ち上げた。
「何いってんですか。僕は世界大戦を統べる男だ。君たちマフィアとは――」
「でもオレを守ってくれるんだろ」
遮って、綱吉が腕をだす。一対一で向き合うことが怖いのか、綱吉の腕は震えていた。目の前に差し出されたものは、髑髏が持っていたはずの霧のリングだ。
説明を求めて骸が綱吉を見下ろした。綱吉が口角を引き攣らせる。
「髑髏ちゃんが。オレから骸さんに渡せっていうから」
「まどろっこしいのは止めにしませんか。オレのとこに来い、だ? 誰にいわれて? ここにきた目的は?」
「っ、リボーンがあんたを勧誘しろって言うんだよ」
「勧誘ねえ」
骸はまじまじとリングを見下ろした。
――守護者を引き受けたのは、単純に本音をいってしまうと打算からだ。
ボンゴレと深く関係してしまえば、彼らは、自分を助け出そうと動くはず。幸いにもボンゴレ十代目との縁はあったし(襲撃した側と襲撃された側という縁ではあったが)、ボンゴレ十代目はお人好しだったので骸にとって扱いやすい人種だった。彼が計画したのは、ボンゴレに自分を救出させる作戦だ。
作戦は大成功で、ボンゴレ十代目たる沢田綱吉は、六道骸を水牢から出した上に仲間として信頼までしてしまっている。
当初に思い描いていた筋書きは、あとは、目の前の少年を憑依弾で乗っ取ってしまえば完成する。骸は両目を細くしならせた。
彼自身も意外に感じたが、洩れでた言葉は脅迫ではなかった。
骸は、不思議そうに綱吉へと問い掛けていた。
「君は? 君自身の意思ってヤツをお伺いしましょうか」
「お、オレの意思ぃ?」
綱吉は嫌そうな顔をする。リングと骸を見比べて、慎重に語りだした。
「好きにすればいいんじゃないの。骸さん、せっかく自由の身になったんだし。マフィア嫌いだよね? なら、無理することないし――、別に強制じゃないし」最後にはぼつぼつした小声に変わった。骸が小首を傾げる。
シーツをどかして、点滴のついていない方の腕をだす。霧のリングには鎖が通っていたが、その鎖を掴むと自らの首にかけた。綱吉が驚きをこぼした。
「いいの?」
横目で彼を見返して、骸は小さく頷く。彼はもとのように横たわると、綱吉を睨んだ。
「僕はまだ本調子ではない。帰ってくれますか」
「あ、ウン。……ありがと、骸さん。オレ嬉しいよ」
綱吉に背中を向けるように寝返りを打ちつつ、骸は、遠い目をして病室の壁を眺めた。
なんだかんだと企みはしたが、自分を助けてくれたときの綱吉は天使のように格好よかった。最高に格好よかった。自分以外の人間が格好いいとか魅力的に見えたのは六道骸にとって初めての経験だった。
おわり
三つ続きのどこか
ぜえぜえぜえ。互いに荒く呼吸を繰り返しつつ、骸と綱吉は銃口をつきつけた。一寸も違わずに心臓に押し付けていた。これにキレたのが骸で、彼は銃を捨てて綱吉に殴りかかった。
「ぐっ!」予想外の一撃に綱吉の銃が吹っ飛ぶ。
「ボンゴレのくせに僕と同じ動き方しないでください!」
拳をつくったままでの暴言に綱吉が青筋をたてた。
「当たり前だろ指導したのあんたなんだから――っっ!!」
右ストレートが骸の肩にヒットする。骸が、右側に傾いたが、それと同時に回し蹴りが綱吉の脇腹を見舞った。吹っ飛び、ボンゴレ十代目は背中を打ちつけた。
工事中のビルの内部だ。それが、大抗争に嫌気が差した彼らの選んだ決戦場所だった。
殴り合い蹴り合いが夜更けまでつづく。ビルの外では、それぞれのファミリーがはらはらとして待っていた。一瞬即発ともいう。両陣は互いに武器を構えつつボスの帰還を待っていた。
組み立て中のビルの頂上に朝日が差し込みはじめたころ、骸と綱吉はついに膝をついた。
「…………、前からいいたかったんですけど」
顔中痣だらけにして唇から血をこぼしつつ、骸が告げる。
互いに肩口に顔を埋めるような格好で力尽きていた。
「僕、君に惚れてるんですけど……気付いてますよね?」
「……そりゃあ……、さすがに気付くけど」
ぐったりと弛緩しつつ、綱吉。声が細々として死に掛けていた。部下に強姦された直後にそいつが離反して、自分に縁ある相手を片っ端から襲撃するので、しまいには本人は度々寝室にやってきたので執着の原因としてそれくらいしか思い浮かばなくなっていた。
ただ、さすがに、ちょっと非現実的かも? と思って口にしなかっただけだ。
「今更何だっていうんだよ、それで」
骸は、うんざりと吐き出された言葉に満足ぎみに頷いた。
「付き合いませんか。了承していただけるなら、僕たちはボンゴレファミリーの傘下に入ります」
綱吉が顔をあげる。骸もあげた。
朝日に猛烈な目眩がしたが、二人は互いを見詰め合った。
「オレ、実は骸さんにちょっとだけ憧れてたんですけど」
「……今も?」骸がわずかに目尻をしならせる。綱吉は首をふったが、しかし、いいにくそうに二の句を繋げた。
「好きだとか傘下に入るだとか。ほんとはオレの下にいるの気に食わなかったクセになんで了承したんだ? 先に……、それを最初に言って欲しかったですよ。一番最初な。ボンゴレファミリーのちゃんとしたボスになる前」
長い沈黙の末にボンゴレ十代目がうめいた。ちょっと格好いい言い方をするな、と、思いつつ骸が頷いた。表情だけは平素のものを保つ。
「素直じゃなくてすいませんね。でも君も悪かった」
「あー、も、ぜんぶどうでもいい……。死にたいくらい疲れた」
げっそりうめく。骸も同意した。そうして一大抗争が集結したが、事情を知らないものには――つまり骸と綱吉以外には、わけのわからない事件だった。髑髏だけはなんとなくの理解ができたが、彼女は聡明なので自分から口を開くことはしない。
骸はおおむね満足していた。いろいろ犠牲にしたけれどその甲斐はあった。
とりあえず、綱吉が抗争を集結させるために口約束をしたくらいのことは理解できたので、相手を自分に惚れさせることに今度は尽力することにした。仮初の恋人になれたのだから、その日も近いなと六道骸はほくそ笑む。彼は根本的に人の迷惑を考えないタチでもあった。
おわり
執事な骸ツナ!
(※エチャで話題になりそのまま勢いで書いた小話です)(※エチャのその場で)
その1.
「というわけで、今日から沢田家の万事は僕がとりしまりますから」
「…………は?」
食堂に知らない人がいると思って、やっと喋ったと思ったらそれだ。きょとんとしていると、手を叩かれた。
「ハイ、フォークとナイフ、持ち方が逆です」
「え?!」
「長男のつなよし君ですね、あとマナーも悪いです」
執事さん……こわい。黒い!
その2.
執事が我が家を牛耳るようになって一ヶ月が経った。
「ああ、そうそう。つなよし坊ちゃん」
「このごろ、君の遠縁の……ボンゴレ家で不穏な動きがありますから。外出には気をつけてください」
「? ……でも、部活で遅くなるよ……。火曜日は」
執事が黙りこんだ。オレをじっと見るその目、笑ってなくてコワイ。
「……じゃあ。何かあったら、僕の名前を呼んでください」
その3.
って、言われてもオレこの執事さんの本名知らないんだけど…。この人、ビジネスライクだし。
「それでは。いってらっしゃい。坊ちゃん」
ああ、訊けるタイミングがない……。
まァいいか。何も起こらないよ。きっと。って、思った翌日にオレは拉致された。
その4.
「つなよし坊ちゃん!」
倉庫の扉が蹴り破られた。すごい。鬼のよーな強さで、なみいる大男を殴りたおしていく。この人、こんな強いのに何で執事?
「何で僕の名前、よばないんですか?」
さいごに、執事さんが言った。
その5.
猿轡が外された。
「だ、だだって、オレ、執事さんの名前知らない……」
「…………。」
二色の瞳があっけにとられて見開く。
「君は……。昔と変わらないですね。六道骸です。おさななじみの」
……笑ってるの、はじめて見た!
(完)
****オマケの過去話
「綱吉くん家って、何気に金持ちですよねえ……」
黒いランドセルを背負いつつ、むっくんがボソボソとうめく。
今日は小学三年生のおわりだ。終業式。むっくんはオレと一緒に四年生にはならない。遠くの町に引越してしまう。
「そんなことないよ。むっくん、人のカチはお金じゃないって」
「ああ……。金持ちほどそういうこと言うんですよね。死ねって思いますね」
むっくんの言うことは難しいのでよくわからない。
「……ぼくは、君のそばにいたいのに……」
隣を並んであるくのも今日がさいご。
むっくんが苦しそうにランドセルの肩ヒモをつかむ。
「一緒にいられる方法を探して戻ってきてもいいですか? 君は……、そのとき、ぼくを迎えてくれますか? 待っててくれます?」
「? あー、うん。また遊ぼうね」
むっくん、頭がよくて体も強いからスキだな。頼りになるオトモダチ。むっくんは、オレの言葉におどろいた顔をした。それから、にっこりとわらう。
「将来、結婚しましょうね」
「? うん」
おとこ同士じゃ結婚できないけど。
まあ、むっくんはよくオレには変なこというから、いつものことだ。
*****オマケの本編後
オレの救出に向かうため、執事はベンツを飛ばしたらしい。
でも、そのベンツは今は見事に路面駐車されている。ベンツを路面駐車って、めったにないけど、でもオレも幼馴染だっていうこの真っ黒い執事の話をくわしく聞きたい。
ききおえて、ようやく、すべてが腑に落ちた気分だ。
「あー、あー、いたいた! むっくんね!」
「綱吉くんは鈍いですね。相変わらず」
はあ。ため息をつく執事。
「いつの間に帰ってきたの?」
「……一ヶ月ほどまえに。わかってくださいよ。僕は、君といっしょにいられる方法を僕なりに考えたんですから……。まあ、君がもう少し成長するまではこのまま執事と主人との関係を続けていいでしょうね。稼ぎが貯まってきたら、同性婚ができるところにでも……」
「?」
後半が聞こえない。
ぶつぶつ、口の中で呟きながら執事は険しい顔をする。
まあ、いいや。別に。そう思って放っていると、執事は不意に厳しい目つきで振り返ってきた。
「ほんと、昔と変わりませんね。真実ならば、さっさとしないといけない質問とか――例えば、さっきなら僕の名前を訊くとか。そういう、大事な聞き逃しをとことん後回しにするところがまったく変わってません」
「そう……? そうしてるつもりないけど」
執事はまだものいいたげな顔をする。
でも、そのうち、軽くため息をついてハンドルを握った。
「気がついたころには、後戻りできなくしてあげますよ」
世間話のようにそんなことをいう。
どういう意味だろう? でも、まあ、面倒だから聞かなくてもいいや。ベンツが緩やかに滑り出した。沢田家はこの町のどこからでも見れる。何せ、どの建物よりもデカいから。
おわり
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