*ちょろーっと放った小話やら小ネタやらを収納してる箱です。
*ギャグだったりエグかったりエロかったりどうしようもなかったり何でもアリです。

**「開戦」
*傍観者な黒曜三人組 

**「あの体勢やばい」
*黒曜三人組で下ネタまじりの暴走
*標的90のバジルとツナの接触具合から

**「舎弟と刺客」 
*ヒバリとツナと獄寺と骸さん

**「恋文」
*骸さん一味のその後?

**「死の体温」
*骸→ツナなリンチ 文字通りにリンチ
*危険度高いです

**「ろくの悪夢」
*憑依増殖した骸氏によるツナいびり
*標的76から

**「始点」
*骸さん方ってどこから制服調達したんだ

**「壱万HIT」
*壱万HIT企画のお礼用会話
*ところにより意味なく仲良さげです
*リボーンとツナ、ディーノとツナ、ツナとヒバリと骸
**「準備中」
*ツナと骸でうだうだしてます
**「新年の挨拶」 
*ツナとヒバリと骸・ツナと骸の新年の会話



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舎弟と刺客

 

「ヒバリさん! ちょっと、いきなりどうしたんですか。手を離してください!」
「どうもこうもないよ」
 綱吉の手をとったまま廊下を走る。背後から、十代目エエエと轟く呼び声があった。
「情報網にひっかかった。アイツがくるよ」
 振り向けば、息せき切って追いかけてくる少年がひとり。
 タバコを取り上げ、手元に着火させるのが見えた。
「ヒバリィ!! その手を離せッッ!!」
「君の舎弟はバカだね」「ちょっ?! 獄寺君!!」
「あっ。十代目は逃げてくださいネ!」
 冗談キツイーっと少年が絶叫した。窓の外へと視線を下ろした。
 緑の制服も奇妙に逆立った青い頭髪も見当たらない。
 綱吉の腰をとって、窓枠に手をかけた。ウソォと叫ぶ声がした。
「喋ると舌を噛み切るよ」
「ひょっ。表現もキツイーっ!!」
 驚くほどの距離ではない。
 飛び出した直後に、廊下から爆風と叫喚とが響いてきた。綱吉は真っ青だ。
 まだ落下してるからだろう。手を伸ばす、と、枝をつかめた。綱吉を先にのせて、幹にしがみつかせる。その次に僕も枝に乗る。黒煙のあがる窓の向こうで、十代目が消えたとか叫ぶ声がした。思わずうめいていた。
「やっぱり、あの舎弟はダメなんじゃないの。もっといいの派遣しようか」
「僕など、どーですか?」声は、木の下から。
 ウンザリしながら見下ろすと、他校の制服を着込んだ少年が地面から手を振っていた。引き攣った顔で綱吉が僕を見る。頷いた。
「そこの犬! 六道がきた。地面を爆撃しろ!!」
「ひ、ひど! 鬼ですか?!」
 六道骸が慌てた様子で――演技な気がしないでもない――グラウンドを横切る。
 直後に、ダイナマイトが辺り一面で炸裂した。窓辺にちょっとだけ髪の毛を焦がした獄寺隼人がいた。きょろきょろ辺りを見回してる。
「じゃ、今のうちに逃げようか」
 少しだけ考えを改めた。あの舎弟、役に立つ。

 

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


恋文

 

(うーんと、どうしましょうかね。本国に帰るわけにもいかないし)
 黒皮の手帳を広げ、少年をペンを下唇に押し当てた。
 金属製のキャップはひやっとしていて肌の温度を下げる。両目を閉じて、眉を顰めながら左足に重心をずらした。右足が浮かぶ。背後から繰り出されたパンチが、薄ペライ紙一枚の差で回避された。少年はペン先をぐりぐりと唇に押し付けた。
(この前の失敗は、やっぱり手痛いですねえ。予定が大幅に狂いますよ。十年計画が十五年計画。二十年計画ですか。もしかしたら一生ものの計画ですか)このやろうと叫ぶ声がする。右足をさがらせる。鼻先を拳が跳んでいった。(しようがないのか)
 色違いの瞳が凪いだ。倉庫のなかを見回し、ぎゃあぎゃあと騒ぐ一団を見つける。
 ワックスで固めた金髪を振り乱して、細身の少年が男たちの間をすり抜けていた。グーで固めた拳には血にそぼ濡れて、彼がすり抜けるたびに新たな悲鳴があがっていた。
「! 骸さん!」赤い舌が覗く。
 ダンッと一足飛びに足を踏み込み、少年の前方へと飛び出した。
「反応が遅い。一歩、動きましたよ」
「すんまへん! コラッ、怒られちったじゃん!!」
 数十センチに伸びたつま先が、先の男の顔面を襲う。
 ギャアア、と身を裂く絶叫が響いた。バタバタと続く足音にも反応を示さず、手帳を見下ろしたまま骸はもう一人の少年を呼びつけた。「千種、今の資金ってどれくらいありましたっけ」
「五万ほどです!」
 倉庫の端で、ヨーヨーを振りかざしていた少年が叫ぶ。
 骸はやはり手帳を見下ろしたままで喉を鳴らした。
「僕の隠し口座、いっこ開放しますかねえ……。このために貯めてたわけじゃないんですけど、でもニホンは物価高めですから何かと入り用ですもんねー。ボンゴレに無様な姿を見せるわけにはいきませんし。はてさて。とりあえず住処は決まりましたけど」
「はあっ?! ざけんじゃねー!」
 日本刀を持った黒服の男が骸の前へ躍りでた。
「あの事務所はオレらのもんだっていってんだろーが!」
「貰い受けたと言ったでしょう」
 ペン先が唇を離れる。
 気だるげな動作で、しかし、ピシリと黒服の男へ突きつけた。
「私たちの新たな基地として有効利用します。貴方がたが下らぬ威圧行為に使うよりはよっぽど意義があります。言っときますが、貴方がたに従ってここまで移動したのは事務所を壊さないためですよ」
 男の右脇でナイフを構えていた男が、横から飛んできたヨーヨーによって殴り飛ばされた。「島田ァ!?」少年はキツネのように目を細くした。
「ちゃんと大事に使いますから。心配しないで下さい」
「ばっ、シンパイとか、そーゆー次元じゃねえよ! 不法占拠っ――」
「面倒ですねえ。黙ってやられなさい」
 骸が頭を振る、と、血濡れの拳が頬にめり込んだ。
 男が真後ろに倒れる。その腹を踏みつけて、金髪の少年はさらに別のエモノへと突っ走っていった。逃げろ、殺される、飛び交う叫喚を楽しむように口角をあげて、骸はペン先を咥えた。スチール製は、やはり冷える。
(確かに面倒ですが、一方で収穫がないわけではない)
 手帳のメモ欄でペン先が走る。サワダツナヨシと文字が走った。
(ボンゴレ十代目は思っていたよりも立派な掘り出し物でした。それがわかっただけでも……)
 十代目の本名、呼び名は主としてツナ、住所は不明、抑えておく必要アリ、並盛中の名簿を漁る、と、いくつかの言葉が付随する。末文でコリとスチールキャップを噛んだ。(いっそのこと。転入手続きをしたほうが、接触しやすいでしょうかね)
(今のはデザインが気に入ってるんですが)咥えたままで顔をあげた。
 扉からはみでた背広の上で、千種が立っていた。
 軍服を思わせる緑。内側からは縫い付けられた赤色が覗く。
(サワダツナヨシには替えられませんか。今回は穏便に進めるとして、いくら積んで転入を済ませるか……、三人分。やはり口座を開けなくては)
「骸さぁーん、カギ。あったですよ!」
 日本刀の脇で転がる男。その胸元に両手を突っ込んだ犬が叫んだ。
 小さく、頷く。首を前へ傾けて、咥えたままのキャップをペン先に被せてのせた。口を離してから、親指でカチンと音がするまでキャップをしめる。
 胸ポケットに差し戻しながら、彼らへと歩み寄った。
「ヤクザを名乗ってるんですから、金庫に十万はないと詐欺ですよね?」
「百万あれば……。コンピューターを」
「そうしてあげたいですけど。小さい事務所でしたからねー。頭も悪そうですし」チラリと、辺りに伏す男たちへと視線を走らす。「大金を貯めてるよーには見えませんね。残念でした」
 千種の両肩がさがる。くすっと笑い、骸は手帳を閉じた。
「何、書いてたんれすか?」
「ボンゴレへの恋文です」
 内ポケットに突っ込んだ。犬が奇妙な顔をする。
 瞳は山なりの笑みを保ったままだった。





おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あの体勢やばい

 

「ぶっ!!」
 バターと倒れた男は六道骸、推定16歳。
 それでも双眼鏡は離さない。その背後で、包丁を持つのは千種。推定15歳。さらに後ろにいるのは、スーパーのビニール袋をブラブラとさせてる犬だ。推定18歳。
 やっぱりアニマルチャンネルでウサギでも取ってこようかな。
 そんなことを脳裏で考える犬をよそに、骸が地鳴りのような唸り声をあげた。
「しんっじられませんよ! セクハラ! セクシャルハラスメントしましたあのガキ!」
「昨日は、リボーンがボンゴレのチ○○さわったって騒いでませんでしたっけ」
 呆れたような口調で千種が言う。簡易テントから、てきぱきとまな板と携帯コンロを引っ張り出している。彼らが脱獄してから二週間が経った。ボンゴレに新たな敵がでた、とのウワサを聞いた骸が、唐突に『強弱のインフレに呑みこまれる前に脱走しましょう』とうめいて牢屋の壁をブチ抜いたのだった。あっさりしたやり口だった。千種と犬が気付いたときには、骸の拳のなかに小型の爆弾がおさめられていたのである。それがあるならさっさとやれ、とは、誰もいわなかった。
 かくしてストーカーよろしくボンゴレの追跡をはじめた彼らであるが。
 事態は、彼らが思う方向とは少しだけズレて大きくなっていた。骸が額に血管を浮かせて叫ぶ。
「○○○とは次元が違いますよ! ひど! 僕だってまだケツの割れ目感じただけなのに!」
「なまなましいれすねえ、骸さんは」
 犬がどうでもよさそうに呟く。
 彼の頭のなかでは鳥が踊っていた。チーターチャンネルを使えば、夕食に肉が加わるだろうか。
「生々しいのはあのガキんちょですってば……!」
 噛みあうような、噛みあわないような会話だ。千種は気にせずにスーパーの袋からジャガイモをだした。まずは皮むきである。山じゃパソコンがないから辛い、と、一日に二十回はくり返すささやきは胸でおさえた。骸が絶叫した。
「だぁから、この! しまいには怒りますよ?!」
 両腕がブルブル戦慄いて、千種には双眼鏡が派手にブレて見える。さすが骸さま、よく、あんなもんで覗いていられるなぁと胸中でひとりごちた。
 皮むきはおえたので、トントンとまな板を叩く。それに被るかたちで、またもや骸。
「どーして騒がないんですかボンゴレ! 僕のときは浄化したクセに! 今、正面から激突したでしょうっ?! そこのガキと思いっきり股間を淫らにすりあわせといてカマトトぶっても――」
「やっぱ!! 肉、捕まえてくるぜ?! も、肉のないメシにはたへられねえええ――っっ」
 ウンザリしてジャガイモを見つめていた犬が、アニマルチャンネルを手にして森に突っ込んだ。
「どうせならイノシシ狙え! イノシシ鍋はうまいぞ!」
 千種が叫ぶ。……耳に手のひらを添えて、しばし待った。
 イノシシー! との絶叫がこだまとなって帰ってきたので、彼は満足して胸を撫で下ろした。
「あー。マジムカですよ。あれ、名前なんていうんですか? 呪ってやる」
「骸さま、キャラが少しお壊れになっております」
「だって……!!」
 ヒクヒクと口角を戦慄かせて、骸が首をふる。
「正面プレイはまだなんです! 処女膜返せ――!!」
「骸さま……」口ごもる千種。
 だが、ピンと脳裏で光るものがあった!
「――大丈夫です」
 そううめいた声には自信がある。
 骸もそれに勘付いた。真面目な顔で、下生えのなかで料理をする千種のもとへとしゃがみ込んだ。二人は、真剣極まりない面持ちで見詰め合う――、鼻先が触れ合うほどの至近距離だ。
 ピ、と、千種が包丁を立てた。ちょっと危なかったので骸があとずさった。
「彼はもうキズモノです。骸さまの立ちバックでバージンは喪失してます!」
「そ、そう思いますか?」
「ええ。バッチリと」
 内心で、はやく話題が移らないかなーとささやくが、それはまた違う話だ。
 再び真剣に眼差しをかわした。数分をおいて、骸が下生えから立ち上がった。小首を傾げて、顎に手をあてて、しかし唇がニヤついている。
「なるほど。既成事実は作って損ナシですね」
「犬のヤツ、遅いですね」
「ナニいってんですか。でかけたばかりでしょ」
 双眼鏡を持ち直して、骸。当然にように、続けて囁いた。
「しかしそうはいっても。彼は早めに殺しておかないと。素直キャラだなんてボンゴレの好感度大幅アップですよ。そうです。ボンゴレといえば、なんだか、見た感じだと僕のこと忘れてそうなんですけど……。おかしいですね」
 千種は知らん顔で、袋からニンジンを取り出した。イノシシカレー鍋はおいしいだろうか。
「まあ、……どうやって殺しましょうかねえ……」
「あんまり酷いことすると、ボンゴレが怒るんじゃないですか」
「抜かりはありません」ビっと、親指をたてる骸。
 たぶん、のろうとか言ってたから、明日からは図書館通いになるだろうなと千種はボンヤリと悟った。チーターチャンネルに追い立てられたイノシシが彼らのもとに突っ込むまで、あと六秒である。

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死の体温

 

 

「っぐ……」
 煤けた体を横たえて、少年がうめく。
 リボーンは視界にいなかった。骸の憑依したビアンキが彼の後頭部を掴んで、どこかへ姿を消した。獄寺が先ほどまで傍にいた錯覚もあるが定かではない。意識も感覚も薄らいでいる。六道骸に破れてから半日は経っているだろう。ツナは気を取り戻していたが、痛みと頭痛と疲労とで立ち上がることができなかった。
(誰か……、いないの。どうなって)
 片目は腫れているらしく、視界が翳っていた。
 辺りを見回す。動くものはない――と、そのとたんに影を見つけた。
 六道骸だ。憑依弾を撃ち込まれたまま放り投げだされたままの。
「…………」顎をずりあげて、呆けた眼差しを送る。やがてツナの瞳に色が戻った。
(そうだ。もしかしたら、こっちに攻撃すれば――)失った勝機を取り戻せるかもしれない。奥歯を食い縛り、床板にツメを立てた。少しずつ、十センチずつ体を這いずらせていく。骸の体は三メートルも離れたところにある。足首から流れでた血が、ツナが進んだ分だけを足跡を刻みつけた。
 三十分ののちに、ツナは六道骸の足首を掴んだ。
 ぜえはあと荒い呼吸が喉を駆け上る。握った体は冷たい。血が通っていないのだ。
(どうしよう。骸が何をする気か知らないけど、戻ってくる前に手を打たないと)
 這い進むのと足を引くのとを同時に行う。ほどなくして、ツナは骸の両頬に指をひっかけるのに成功した。ぐいっと引き寄せれば、半開きの唇が揺れた。目蓋は力なく閉じられている。やはり体温はない。少年が掴んでいるのは死者の体だ。
(はやく。どうすればいいんだ)視線が首へと赴いた。(しめる。いや。殺すのはよくないよ)骸に体重をかけて、下半身も引き寄せる。瞳が滲んだ。
(いくら骸でも。……でもどうすれば)
 じぃと見下ろした。頬を掴む手がぶるぶる震えていた。
 挟んだ少年の顔立ちは整っている。黒髪は艶やかで指通りもいい。
(……体温がない)
 鼻筋を見下ろした。
 少年がパチリと目を開けた。
『――――?!!』
 反応は同時だ。骸はツナを振り払い、ツナは後退る。
 突き飛ばされた分と体力がない分が重なり、ツナは壁をずるると這いずった。骸が自らの頬に触れる。「何かしたのか? 何をした?!」
「ろ、……くどう。ビアンキたちは?!」
「彼女らには然るべきところで大人しくしてもらう」
 突き放すよう早口で返し、綱吉との距離をつめる。這って逃げようとしたがしかし、大股で歩むほうが早かった。骸は無造作にツナの足首を踏みつけた。「ぐあ!」
 びくりと上半身が仰け反る。腕を振り回したのは反射的な行動だった。
 骸の眉根が不機嫌をありありと映す。足首からどいた靴先は、狙いを逡巡するかのように上空で数秒ばかり停止した。少年は色違えの瞳をニィと笑わせた。靴底が股間を踏みつけた。
「ヒッ?!!」ビクッ。体が目に見えて戦慄き、瞬時にツナの顔色が消えた。
「おやおや。女性のように軟弱であってもペニスは大事ですか?」
「なっ、や。やめろ! 何すっ――」
 骸がニンマリと笑った。ぐっと体重が乗せられる。
「うぐああああ!!!」
「潰しでもすればしおらしくなりますかね?」
「ぎゃっ。ア、アグゥ?!」靴先が急所をなじる。
「僕を殺そうだなんて……。君には千年ほど早い」
「ひいいいい!! やっ、やめてェ――――っ!!」
 歯を食い縛ったままツナが首を振り回した。踵が床につけられ、爪先で股間を踏まれていたが的確に急所を捉えている。前方に体重を映されるたびに芯が焼けるほどの衝撃が脊髄を駆け抜けた。本来ならば扱いにも気を使うデリケートな個所だ、体と靴とに挟まれて平らに伸ばされ踏みつけられ、ガクガクと腰が震えた。
「ひぃっ、ィイいいいいっ!! いあっ、いいい痛い……ッ」
「そりゃ痛くしてるんですから当然ですよ」
 骸が踵をさげる、下で連なる二つの袋が、ギュウーっと踏みつけられた。
 がんっ。鮮明に聞こえたのは、獣のような咆哮よりも仰け反ったツナの後頭部が床に思い切り打ち付けられた音だ。顔を真っ赤にし、頬に多量の涙を伝えて床板を掻き毟っていた。「っぎゃ、あ、あああ……ッッ」
「潰してあげてもいいんですけどねぇ。乗っ取るにしても所詮は僕の体でないし」
 伸びた腕がツナの両足を掴む。V字に開かせると、靴底総てをつかって睾丸を踏みつけた。再び獣のような咆哮があがる。床に向けて平らに伸ばすよう、平らに圧縮させるように丁寧に踏みしだいた。ツナの喉は灼熱の鉄を流したように熱く燃え上がっていた。腹の底も。下半身を中心として、ひどい怖気を伴った熱が全身で暴れまわっていた。喚いたのちに、懇願した。
「ぉ、おねがっ。やめ。つ、つぶっ、潰れちゃうっ」
 抱えた両足が、筋肉がひとりでにビクビクと暴れだしていた。
「クッ。聞こえませんね、ほらほら」
 ゴリゴリと踏み転がせば、衣服の上からでも睾丸が無残にひしゃげているのが見て取れた。ギャアアと金切り声が木魂した。
「ごめ……なさ、アア! 許して!! ゆるしてくださいいいっ」真っ赤であり真っ青だ。あふれた涙が床にいくつものシミを作っていた。骸が目を細める。
「二度目はありませんよ。君が男としての機能を失っても構わないんですから」
「ヒアッ、ああっ、…………ッッ!!」
 爪先で踏んだままで揉み解す。少年の瞳が白黒と明滅した。
「立場を忘れずに。言うことをきく限りは丁重に扱ってあげる気でいるんです。これでもね。その親切を無下にするのはもったいないと思いませんか」
「あっ、ああ、は、はいぃっ。も、やめっ本当に潰れ、ひぎ?!」
「僕は口答えをされるのが好きじゃありません」
 ギチと嫌な音が響く。足首が痙攣をひっきりなしに繰り返した。声もなく悶えつつ少年が必至に首を頷かせる。見下ろすオッドアイは氷の冷気を灯していた。
「……わかればいいんですよ」
 骸は微笑み、靴底をどけた。ツナが息をつまらせたまま天井を見上げた。
 どさりと脚が放られる。呆けた瞳から新たに流れるものが多量にある。感慨もなく眺めながら、骸は頬を撫でた。最初に。ふっと感じたものは気のせいではなかったようだ。人肌の温もりに眉を顰めた。
 死んだ体にそのようなものはないはずだ、現に指先も唇も氷点がごとく冷め切っているのだ。指先は首を辿る。締め付けられた痕跡は無かった。
「君は――」体を丸めて、ツナが泣きじゃくりだした。
 二の句を棄て、やがて骸は落としたままの短剣を拾い上げた。



おわり

(つぶやき・反転)
電気按摩 リンチの類はヒバリさんがよく似合うなどと思いつつ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ろくの悪夢


「くふ。脆いですね」
 短剣を拾い、リボーンがうめく。
 その手の甲には浅い切り傷だ。叫んだのはツナだった。
「卑怯だぞ! ビアンキを盾にするなんて!」
「僕が卑怯なことをしない人間に見えますか? 見えるなら君の目は節穴だ」
「ひぃっ!」右目に針を突きつけられて、ツナが震えた。千種のヨーヨーから噴き出たものの一つであり、その端を握るのが獄寺だった。
 四肢を四人がかりで押さえつけられていた。右手を獄寺、左手をビアンキに、右足は千種で左足は犬だ。カエルの解剖のように、大の字に開かれている。
「この家庭教師よりも君の方が、まるで赤ん坊ですね。脆弱すぎて」
「…………っ」
 鬱蒼とした笑いをのせて、ビアンキが覗き込んでくる。
 その右目にはハッキリと六の字が見えた。
(違うんだ。これ、全部が本当に骸が憑依してて……!)
 白くて冷たい、真っ赤なマニキュアのほどこされた指先が頬を撫でる。初めは上下に揺らぐだけだったが、だんだんとツメが立てられて「イッ……」
 複数の赤い線が頬に刻まれた。ビアンキがくつくつと肩を揺らす。
「今、ここで君に傷をつけるのはあまりに簡単だ」
「それってつまらないと思いませんか?」
 ニカリと。晴れやかな笑みを見せて、獄寺がツナの上唇を引っ張った。
 伸ばされてうめくツナの頭上に足音が近寄る。リボーンだ。涙で滲むツナの視界には、右目に六を刻み淫猥に口角をあげる姿があった。「う……」喉が震える。
 獄寺が歯を見せて笑い、指を放した。ツナがうめく。
「うそだろ、リボーン」
「ウソじゃないですよ。クフフフ」
 面白がるようにリボーンが懐を漁る。拳銃を探り出した瞬間の笑顔は、リボーンの姿でありながら骸を連想させるほどに彼らしい笑い方だった。
「おあつらえ向きなものがありますね。ボンゴレ、あなたは最後まで僕を愉しませてくれますよね?」頬を赤らめ唇をはにかませて、しごく嬉しげに。ぞっとしたものが背筋を伝って鳥肌が沸いた。ツナが悲鳴をあげて四肢を暴れさせるが、誰の手も緩まらない。口に銃口が突きこまれた。
「ようく舐めてください……。後で痛い思いをするのは、――ああ。どうせなら真似てあげましょうか。このアルコバレーノならば……そう、ダメツナ」
 ウキウキした声音が、一転して氷点下まで温度をくだらせた。
 刺すように骸は告げた。「テメーのケツにぶちこんでやるんだ。暴発してほしくなかったら、ガツガツとブタがエサ喰うみてーにしゃぶって見せろよ」
「りっ……――ぁ、ぐ!」
 叫びかけた声音を、銃口で打つことによって封じ込める。
 奥歯に与えられた一撃にツナが目を瞬かせた。クフフフと獄寺が笑った。
「歯って硬いわりには神経がたくさんあって、敏感なんですよ……。効くでしょう。クフフ」
「ほら、ちゃんと舐めるのよ」
「隅々までなァ、ウッサギちゃ〜ん」
 いくつもの腕が伸びてきた。
 体重をかけて四肢を抑えたまま、口をこじ開ける。
 リボーンが笑いながら銃口で中を掻き混ぜる。やはり笑いながら、冷徹に言いつけた。「舌が絡ンでねーぞ、コラ。やる気あんのか?」
「…………っっ」
 鼻が摘まれ、ツナの顔色が青くなる。
 それまでも蒼白だったが。生理的な理由も加わって、頬を涙が流れていった。
「ぐ……」金属に舌を這わせる。口を抑えていた手がどいて、喉の奥まで銃口が突き入れられた。
 息苦しさに目の裏をチカチカさせつつもツナは銃をしゃぶった。獄寺がクハハと笑った。「これは参りましたね」
「この男、君に反応してますよ。生理的なところまではコントロールしていなかったんですが、ハハ。これはこれは。どうしますか、ボンゴレ?」
「ご。くでら……くん……?」
 獄寺が――、骸が、獄寺の足の付け根へとツナの手を導く。
 たしかな膨らみがあった。目を白黒とさせ、ビアンキに解放された腕で口角を拭う。だがビアンキに後頭部を掴まれ、獄寺の股間へと顔を埋めさせられた。
「弟はボンゴレ十代目に劣情を抱いてたようね。あなた、かどわかしたの?」
「クフフフフフフ……。面白い」獄寺が自らの両腕でツナの後頭部を掴む。ぐっと、顔面を局部へと押し付けた。放っておいても膨らんでいく塊を骸は心底から愉しんでいた。
「君たちって、どーいうファミリーなんですか?」
 ツナは呆然としたまま、押し付けられるままに鼻先で固まりを捏ね回していた。
 呼吸もままならない。暴れようとしても千種と犬らしい屈強な腕に背中を押し付けられている。
(なに、これ……)(獄寺くんが……、え?)(苦し)クフフフフフフ、と、五人分の笑い声が鼓膜を震わせる。胸に切迫感と空虚感とが同時にあった。
 手足が痺れて、思考がうまくいかない。全身が目の前の光景を拒否しているようだった。
「本当に面白い――」
 含むような笑いを噛み殺し、骸が肩を震わせる。
「どこまで僕を愉しませてくれるんですか、ボンゴレ?」
 死刑か何かの宣告のように。胸の深みを切り込まれて、ツナは数秒の失神へと陥った。骸はそれに気づかなかった。獄寺の手がジッパーを下げた。

 

おわり

つぶやき(反転)
18禁なので自粛してみました。この後の展開、この骸氏にとっては「姉弟サンドですね」な発想がいちばん愉しそうです。女にまたがられ男につっこまれーなサンドイッチ状態です。極悪ですね。姉と弟による獄寺サンドですよ。中身は両方とも骸さんですけどノリノリでやってくれそうです。綱吉さんを襲って食べちゃうと。うわー、下品だけど楽しそう。心身ともにエグり倒しって感じですね!
すべてのことが終わったら骸さんに戻って、例のはにかみ顔で
「ボンゴレ十代目の童貞をふたつも奪ってしまいました、クフフフフフ」と爽やかに気持ち悪くキメていただきたい。

 

 

 

 

 

 

 

始点


 少年は辺りを見回した。タクシーのエンジン音が遠のいていく。
 並盛町の繁華街に、とだけ伝えたので細かな現在地がわからなかった。むせかえるような熱気に眼をすぼめる。ネオンライトは毒々しい色合いでもって明滅し、似たような顔をした日本人が大量に往来を歩いていた。
「…………」
 背後に控えていた少年は、青髪で隠れた耳へと口を寄せる。
 左右で色の違う瞳が上向いた。うらぶれたビルの三回を、ガラの悪そうな中学生が集団で歩いていた。少年が頷く。
 ニット帽の彼も頷き、顔を引かせてもう一人の少年を呼びつけた。
 中学生を追った先はビルの屋上だった。
 鈍い音と鈍い悲鳴。鼻にツンとくるのは血の香りだ。
 わずかに口角をあげて、少年は大股で一角の集団へ歩み寄った。制服姿の子供が三人と鼻血をたらして脱力している子供がひとり。深緑の制服と深緑の帽子は、形状も相まって軍服を連想させた。
「ん? なんだ、アンタら」
「文句でもあんのか、アー説教ってか?」
 青い髪は表面に銀色を浮かばせる。
 仁王立ちになった少年の後ろで、二人の少年が懐に手を伸ばしていた。
「…………ンだよ。ケンカ売ってんのか」
 奥で、子供の襟首を掴んでいた中学生がうめく。
 襟首を持つとは反対の手で、エナメル質の財布を手にしていた。
「た……。たすけて。おねがい」
 弱々しくうめく声が続く。
 ガンッとコンクリートの壁に後頭部を打ち付ける音がした。少年の顎からボタボタと血が飛び散っていった。青髪の彼は口角を吊り上げる。顎をしゃくり、後方の二人を促した。
「――――」
「ヒャハ」
 タタと軽快な音。
 駆け出すのと、子供二人が打ちのめされるのはほぼ同時だった。
 残りひとりは目を見開かす。ぐったりしていた子を盾にするよう持ち上げる。青い頭髪をはためかせながら、少年は嘲笑をこぼして頷いた。子供は、盾ごと打ちのめされコンクリートに転がった。
 鼻血をこぼす子供に歩み寄り、最中で財布を踏みつけたが気にすることなく、少年は襟首を取り上げた。無造作に上着を脱がせ、ベルトを引き抜き下肢を露にさせる。
 二人の少年も、体格の見合う子供から制服を奪取していた。
「シャツは血で汚れてますね」
 ポツリとこぼす。少年の一人が、ただひとり衣服をまとっていた子供に手を伸ばし、上着を破りシャツだけを脱ぎ取った。青髪の彼へと渡す。シャツに袖を通し、上着に袖を通し、最後に帽子をかぶって瞳をけぶらせた。その手には、子供の懐から抜き取った生徒証があった。赤い方の瞳がヴヴと羽音のようにうめいて、貼り付けられた顔写真の形状を変える。数秒後には、青髪の彼が生徒証のなかで口角を吊り上げていた。満足げに少年が鼻腔を膨らませる。赤眼はヴヴヴと唸りつづけていた。
「行きましょう」彼には子供の家が見えていた。この場で倒れる四人全員の家族ひとりひとりの顔までよく見える。四つの家族のうち子供が失踪したと嘆くのはひとつだけだ。あとの三つは、子供の存在まるごと忘れることとなる。「今夜中に終わらせますよ」
 背後で二人の少年が頷く。青髪の彼は瞳をうならせたまま子供ひとりひとりの顔面に手を翳していった。ピシリと壊れる音は少年自身だけの耳に届く。裸で横たわる子供たちは永遠の悪夢にとらわれるのだ。一晩の間にはあまりの恐怖で形相も元のものとはかけ離れるだろう。
 少年の一人が駐車場を見下ろして呟いた。丁度、若いサラリーマンがドアに鍵を差し込んでいる場面だった。「車を確保しますか」
「頼みます」
 オレが行くと嬉しげに叫ぶ声。
 駆けていく背中を見据え、色違いの瞳が軋んだ。
「あなたはこうも簡単にいかないのでしょうね、ボンゴレ十代目」

 

おわり

 

 

 

 


開戦

 

 

「骸さま、そろそろ始まりますよ」
 サンドイッチからはみ出たレタスを齧りながらも、六道骸は双眼鏡を取った。
 背の低いパラソルの下で横並びになる千種と骸だが、その後方では犬が大の字に寝転がっていた。ハイキングシートを広げた上であり、炎天下の焼けたコンクリートに接してはいないが、犬の全身は真っ黒に日焼けしている。
「これは、また…。数ではあちらが有利ときましたか」
 サングラスの奥でオッドアイが瞬く。
「あそこ、ボンゴレの右斜め上のビル。五階の窓に」
「ヒットマンがいますね。そんなに大した腕前じゃないでしょう、銃口が光っちゃってますし、リボーンが始末をつけますよ」
「家庭教師……。こっちの存在に気付いてると思いますか」
「どうですかね。半々、じゃないですか」
 双眼鏡を下ろし、骸は再びサンドイッチに齧りついた。
「ま、他の者の生死はどうでもいい。ボンゴレの動向を」
「はい」寝転がっていた体をズリズリとさげて、千種はパソコンを持ち出した。扇風機を一人で浴びるパソコンは、ギシギシと不穏な悲鳴をあげながらも動作をした。
「暑さでカメラもイカれかけちゃってるな」
 ぼそりとうめく千種の横で、犬が骸の足を掴んだ。
「骸さぁーん、オレ、暴れたあーい!」
「水でもかけて頭を冷すんですね」
 どうでもよさそうに言い捨てて、骸はカカトでもって顎を蹴り上げた。
 あうー、と、うめいて犬が両手を開く。指にこぼれたツナを舐め取る、その直後だ。骸が、寝そべった体を乗りだした。
「骸さま! ボンゴレが――」
「ええ。まったく、狂ってるとしか言いようがない!」
 叫びながらも少年の横顔には歓喜が貼りついている。
 レンズの中には、若きボスがいた。背が低いのを補うように、頭髪が上向きにツンツンとたっている。彼は、アメリカンギャングの集団を前に、一人で前へと進み出ていた。
 両手を広げて武器がないことを示している。
 振り返らず、骸が尋ねた。
「音声は?」
「ほぼ死んでます」
 ヘッドフォンを左耳にあてながら、千種。
「犬。そこの双眼鏡でボンゴレの動きを見て実況してください」
「骸さんは?」「僕はコッチです」
 傍らに寝かせていたライフルを拾うと、素早くサングラスを上にズラした。慎重な動作でもって眼鏡を覗く。ギャングの一団をざっと見回し、そのあいだに唇が捲れ上がった。
「正気の沙汰じゃない。甘すぎるんですよ、綱吉くんは」
「相手方のボスがツナぴょんに歩いてきてまっす」
 骸の隣に寝そべった犬が、舌をたらしながら叫んだ。
「もっと近くに来いって言ってるみてーれすよ。手招きして、腕を差し出してます。握手しろって意味じゃないれすかね。応じたらバカだぜぇ〜」
「綱吉くんは救いようなくバカですからねー。こういうときは」
 トリガーに指がひっかけられた。照準は赤毛の男である。
 背の高い男に周囲を囲まれたまま、拳銃を構えている赤毛の男である。骸がいっそう口角を吊り上げたと同時に、銃口が火を噴いた。
『……っ、……――――ィイ!!』
「うわっ!」千種が鈍く悲鳴をあげてヘッドフォンを放り出した。
 ひどい金きり音だ。地上で交戦が始まったのだ。風にまぎれて怒号と発砲と爆音とが、連続で轟いた。骸はにやりと口角をあげたままで、ライフルを立てた。
「これで、確実に僕らの存在はバレたと。……ああ」
 ウットリ囁きながら、膝をたてた骸は、しかしパラソルに頭をぶつけた。
 しばしの沈黙。傘ごと移動しながら、骸が、うめいた。
「綱吉くんと、直接に顔を合わせるのは二ヶ月ぶりです。少し髪が伸びたこと、気がついてもらえますかね?」
「オレが日焼けしたのには気付いてくれるかなぁ」
「撤収ですか?」
「ええ。地上戦に合流します。犬、暴れてきてください」
「やったー!! 何チャンネル使ってもいいれすかっ?!」
「どうぞ。派手にやってくださいね。あとボンゴレファミリーは傷つけない。今回は活動資金をふんだくることが目的ですから」
 はーい、と、元気に返事をして犬が踵を返す。屋上の扉を飛び出していった彼を見送ると、骸は、残りのサンドイッチに口をつけた。
 千種と一緒に、再びパラソルの下に収まる。彼らの肌は透けるほど白かった。
「骸さまは」
「昼ご飯が終わったらいきますよ」
 ごくごく平凡なことのように言い捨てて、彼はツナサンドイッチを食べきり、さらにはサラダまで食べた。所要時間は十分である。広場では、数人の死体ができあがっていた。
 ――と、階段を駆け上がる音。骸は千種と顔をあわせたが、一瞬あとには、暗い淀みを顔面に張り巡らして腰をあげた。扉をあけて、飛び出したのは、一人の青年だった。
「あなたから会いに来て下さるとは、光栄ですね」
「お前なぁ……ッ、そうやって営業妨害するのやめろ!!」
「仕方ないでしょう。あなたと僕とは、商売敵なんですから」笑みを崩さず、穏やかな口調を崩さず青年と対峙する骸であるが。その瞳は、愛しいペットとの再会を喜ぶような光に満ちていた。




おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

壱万HIT の お礼会話でした!


「只今、感謝企画としてリクエスト受付中です」
「って、オレの部屋の窓に堂々と貼ってあるんだけど」
「貼るよう頼んだんだ。剥がすなよ」
「言いながら銃口を向けるな!」
「あっ。しかもこれ、外側から貼ってる」
「貼り付けはヒバリに頼んだ」
「リボーンの言うことならきくんだねえ」
「人徳ってやつだな」
「ハイハイ。で、何なのコレ?」
「そうだな。テメーは知らなくてもいいコトだわな」
「はあ…って、ええ?!なんだよそれ」
「できることっつったら祈るくらい…か…ぐう」
「かっ、肝心なトコで寝るな――!!」

*****

「たっだいまー。あ、あれ。ディーノさん!」
「…? どうかしました?」
「どうもしないぜ。…いつも通りだ」
「ピストル…? っ、ディーノさん!?」
カチャッ
「すまねえ、ツナ!」
「うわあああっ!」
――ポン!
「…へ…?た、垂れ幕…?」
「『りくえすと大募集中です』……」
「ハハハ。そういうことだ。よろしくなっ」
「…………」
「ナイスな驚きっぷりだぜ、ツナ♪」
「さーって。奈々さんのメシでも食いに行くか」
「……し、心臓にわるすぎ……」

*****

「おはようございます、ボンゴレ十代目」
「えっ……、あ、骸……?!」
「以前はお世話さまでした。よいしょっと」
「ちょっと。何、堂々と応接室に入ってるの」
「おや? 堂々としてませんよ。窓からですもん」
「そーいう問題なのか……っ?!」
「許せないね。だいたい、何さ。それは」
「ああ、このタスキですか。力作です」
「手作りなんだ……。ていうか、

『リクエストありがとうございました!!』

 って縫ってあるけど、一体?」
「さぁ〜。何なのでしょうね。不思議ですね」
「なんだか、最近、皆に内緒ごと作られてる気が……」
「気のせいじゃないの。綱吉、それ追い出して窓しめて」
「ソレ呼ばわりとは酷いですね。いいですよ」
「あ、骸さんの目に涙……って、ええ?!」
「でていってあげますよ」
「待った。綱吉は置いていく」
「っく。手ごわい」
「気づいて当たり前だ――っっ!!」

 

 

 

 

準備中に拍手においてました!

 

「……で、これって、どういう状況ですか?」
「拉致監禁ですね。並盛中の応接室で」
「ど、どこからツッコめばいいんですか?!!」
「鬼のいない間の洗濯は楽しんですよ」
「意味わかりませんから!」
「クフ。六道輪廻を巡ったときから、常識など消えました」
「あ、それなら、少し説得力ありますね」
「でしょう? もはや、なんでもアリです」
「って、ごまかさないで下さい!」
「バレましたか。まあ、(ごにょごにょ)と言ったら縄を解きます」
「あ…。は。拍手、ありがとうございました! うれしいです!」
「今は準備中だったりします。申しわけありません」
「わ。ちょっ…。いつまで、耳にくっついてんですか!」
「鬼が帰ってくるまでですかね♪」
「……ドア、セメントで固めてるよう見えるんですけど」

 

 

 

 

 

「新年の挨拶」

 

「1月1日遭遇編」

「1月1日! あけましておめでとー!」
「おめでとう」
「うどぅ! ヒバリさん?!」
「今年もよろしくね」
「あらあら。ツッ君、お友達?」
「学校の先輩だよ」
(上の階から降りてきたように見えたんだけど…?)
「綱吉は僕によろしくって言わないの?」
「あ、ああ。今年もよろしくお願いします、ヒバリさん」
「ウン。…綱吉のはじめての宜しく、僕の?」
「ええ? あ、母さん。今年もよろしくお願いします」
「ツッ君。今年もよろしくお願いするわね」
「あら。そこの子もツッ君のお友達?」
「えっ。うぎゃ、六道骸――!!」
「綱吉くんの初めて、トリに奪われてしまいました…」
「ふん。一足遅かったね」
「ていうかやっぱり上から?!」
「窓が開いてました」「窓を開けた」
「ど…。堂々というなー!!」
「叫ぶと疲れますよ。あけましておめでとうございます」
「お…。おめでとうございます」
(今年もこんな調子なのか…!)

 

 

「初詣誘拐編」


「あ。オレ、まだ初詣いってないや」
「ってわざわざ口にするとスゲーやなこと起こる気がするけど」
「よくわかってるじゃないですか。こんばんは、綱吉くん」
「でたー!!」「あ、ひどい。人を幽霊みたいに」
「なかば幽霊だろ! この輪廻男!!」
「……ちょっと、傷つきますね」
「まぁいいです。その分だけお礼をもらえれば」
「さー、深夜の神社にレッツゴーです!」
「ちょっ、深夜になんかいって何すんだよ」
「何って……。クフフ。イ・イ・コ・ト♪」
「ぎゃああああ!!! 誰かー!!」
「やですねーまるでケダモノがきたよーですね」
(ま、まるきり他人事でちっとも応えてないいいい!!)