ぜろ?

 



(あ……)
 カレンダーを見上げ、祝日の確認をしていた綱吉は唐突に目を見開いた。
 学校帰りで、まだ肩掛けカバンすら下げたままだ。じぃっと一点を見つめる。そうするうちに、正気に戻って恥かしげに唇を噛んだ。
「さすがに自意識過剰っていうか……」
(考えすぎっていうか、意識しすぎっていうか)
 眼差しの先には、やはりカレンダー。2006年だ。
 9月6日のところに小さく星マークが書き込まれていた。綱吉は後頭部を掻いた。見つめる先は、27日だ。母親も友人も、ふざけて『27』と『ツナ』をかけてトレードマークにするので、綱吉にはその数字が自分のマークであるように感じられる。
「…………」(あの時計、気に入ってくれたかな)
 少々奇抜なデザインだ。出かける間際にビアンキと会い、なんだかんだで同行し、「仲良くなりたい子がいるの。そう。じゃあ、こういうときにはインパクトで勝負するものよ」との一言で奇抜なかたちのものを選んだのだった。
 彼から、連絡はない。あれから20日あまりが経ったが、それだけでまだ顔も合わせていない。
 薄くため息をついて、綱吉はカレンダーから目を逸らした。
 69と27、その数字が並んでいるだけで彼と自分を思い出すなんて。少し、なんだか、重症というか。深みに嵌まっているような気がしないでもなかった。
(喜んでくれてるといいけどな)
 窓を開ければ、室内に清々しく風が入り込んできた。

 

おわり




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