すぎゆく冬へ

 

 

 

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 不思議がることもなく、ヒバリはマフラーの端を摘んだ。『27』のアップリケを見下ろす。
 マフラーの生地よりも濃いオレンジで、月光に晒されて銀色と混ざっていた。
「これ、母親のお手製?」
「そこだけですけど。小学生の時から使ってましたから」
「ワオ。綱吉のお古ってこと」嫌がるでもなく、ヒバリは顔を埋めた。
「道理で綱吉の匂いがするわけだ」
「そ。う、ですか」
(よく言える。そういうことが)
「あと太陽みたいな香り」
 消え入りそうなほどに細い声だった。
 ヒバリを見上げれば、欠けた月が視界にまぎれた。少年の白肌を上滑りして、眩い銀が目にかかる。黒が銀に見えた。黒尽くめの彼が、見惚れるほどの銀の光を全身で着込んでいた。
  白光りのなかでヒバリが笑う……。

 綱吉は呼吸をとめた。体中の血が、脳天まで逆流した。
「ゆ、夕飯食べ尽くされちゃいますよねっ。早く行きましょう!」
「大好き。ねえ、綱吉は?」
「……っ、お、俺はっ」
  目を反らしたとたん、がしりと空いていた手のひらが頬を鷲掴みにした。
「あああっ?! 好きです! 大好きです!!」
「そう。両思いだね。知ってたけど」
  その顔が近づいた。彼の長身が影をつくり、銀色が遮断される。
  何をされるかに気づき、手で押し留めようとしたが力を込められなかった。
  ぬらりとしたものが唇を濡らす。冷え乾きささくれ立っていたものを舐めて柔らかくして、形をなぞるように上下を往復した。指先が髪の付け根に潜り込んでくる。ぎゅうと目を閉じた。
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おわり

 

 

 

 

*再びチーターさまからの素敵挿絵…です!
*綱吉さんと一緒に照れませう!

*うはー。しあわせです。
ヒバリさんヒバリさん! 書いたものにちょっとでも
インスピレーション受けていただけると凄くうれしいです!
月明かりの中で笑うーってシーンをチョイスなさる感性にも感激です。
こんなに幸せでいいのかってくらいです。ありがとうございます!
絵にあわせてちょこっと本文も編集してみましたっ。

*チーターさまが共同運営なさってるサイトは「わっしょい!」さまです!
直行してホワーって癒されてくるべきだと思います。
もはやわたくしは足を向けて寝られませんです。

 

 

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