おまけ








  「 余談 」





『墓標に赤いめかくし』
  骸がさしだした冊子に赤字で書いてあったので、ヒバリは眉根を顰めた。
「僕が持ってるのと違うんだけど……。僕のは、『墓標のゼラニウム』って」
「君のせいで変更になったんですよ」
「ぼくのせい?」
  ええっと、と、掠れた声をだしたのはソファーに腰掛けていたツナである。その横に収まるディーノは、ヒバリのいれた紅茶を飲みながらも明後日を見上げた。
「あー。あれ。あそこ、ヒバリってば台本と違うことしてたな」
「…………」ツナが顔を赤らめ下を向くのと、ほとんど同時にヒバリも明後日を見つめた。
 骸は両目を細くしてかぶりを振った。夕暮れときの応接室だが、カーテンはきっちり閉められ電光が降り注ぎ、夜の温度と変わらなかった。
「もうちょっと暴走してくれないといけなかったんですよねえ。 おかげで僕の出番が増えました」
「 へえ……」「後悔しました?」
「別に」眉根を寄せ、ヒバリ。ディーノだけが平然と紅茶を飲みつづけていた。どっちみち、自分がでばるところに変動がないからである。応接室に沈黙が落ちたが、破ったのはツナで、彼はテレを滲ませながらも硬く言い放った。
「まあ、……別にオレはどっちでも大して変わらないかなって」
「そう思うの?」驚いた声をあげたのは、ヒバリだ。
  骸は気分を害したと言いたげに反論した。
「変わりますよ。僕が応接室に入る前に事後だったか、そうでないかですよ! ヒバリなんかと一対一で抱かれてそのあとに裏切りですよ! 意義も多いに違うじゃないですか。もっとヒバリをどろどろの悪役にしたててあげればよかったんですよボンゴレは!」
「いやオレがやってるわけじゃないですけど」
「ていうか、何。そのよくわかんない悪意の滲んだセリフは。どっちかっていうと、君は変更になって得してるじゃないか」
「……」ツナが顔を赤らめ下を向くのと、ほとんど同時に骸も明後日を見つめた。ソーサーに紅茶を戻しながら、ディーノは憮然とした面持ちで骸とツナを睨みみた。
「ごっそさん。別にオレは損な役回りだなーとか思っちゃないぞ。別にいいんだが、別にいーんだがどーせアレだろ。おまえさんが妙にトゲたってんのは自分だけ本番がなかったからだろ」
「で、ディーノさん……。あんまりずばっと言わないで」
 か細くツナがうめいて、再び沈黙。やがて骸が搾った声で言った。
「あれですね。僕もヒバリもディーノもそれぞれ納得がいかないとこがあるようですね」
「そうみたいだね」「コブシで決めるしかないかもな」
  ディーノの言葉を合図に三人がソファーを立つ。自分の分の紅茶だけをもちだして、ツナは、廊下で深々とため息をついた。室内からはどったばったと暴れる音がした。
「いちばんワリくってんのはどー考えてもオレなんですけど!」
  無論、誰も聞いちゃいないのだった。

 

おわり

 


 

 

 

お遊び的なオマケ話でした(笑)。