ふしぎだ。不思議な関係だ。
真前のご老人と見つめ合って硬く確信する。はっきりいって、お互いにお互いを嫌い抜いているとリボーンは思うのだ。
(いつかオレが殺してやる)
青年は、心中の思いとは裏腹に、楽しげに自らの膝をたたいた。
「ワリーなァ。こんなに!」
暗室のなか、二人でそれぞれ一人掛けソファーに身を沈めていた。
老人は、無精ヒゲを撫でている。手のひらをがぽりと宛がいながら。テーブルには札束が三つ積んである。
悠々として一つを取って、リボーンは枚数を数えはじめた。
「あれだな。狡猾だとその分の損も多いってか〜。くそじじい。正直がいちばんだな!」
「……君がそれをいうかね!」
「いくらでも言ってやるぜ」
ニヤニヤして歯を光らせる。
手を開いたり、握ったり、神経質な動作をくりかえして老人がうめいた。鉛の声だ。イヤミだった。
リボーンは札束越しに九代目を眺め、不出来で天才的な妙な才能を持っている弟を思った。リボーンも、ボンゴレが誕生した詳しい経緯は知らないが、しかしかつてボンゴレ十代目として働いていた日々で九代目から学んだ知識は頭にあった。
――やっぱり魔性のものと手を組んじゃいけなかったんだ。
その気弱な一言が、始祖の最後の教えだという。
(ボンゴレファミリーの初代ボスが残した遺言がそれだ。なのに、テメーは魔王を招くのか。ツナ。……キスしてやりてぇじゃねーか、チクショウめ)
面白い。とても面白い。数え途中の札束よりもずっと価値がある。
老人は、膝上で両手を組みながら、アンニュイなため息を吐いた。リボーンはワザとゆっくり数えてやれと思った。
「まあ、致し方ないな。残念な結果だが」
暗室に窓はない。赤味を帯びたランプの灯りが横顔を縁取る。
「次も。また、遊ぼう」
「おーよ」
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2010.2改稿 2006.7.21最初