一満の桜がごとく!
第13
話:百満のさくらのなかで 

(中略)

「君はだれなの……っっ」
「ヒ、バリさん――、もしかして」
(ずっと、思い出そうとしてくれてたんですか?)
 声にはならなかった。喉が震える。――額の熱が完全に消え去るのを感じた。
 代わりに、目尻から、はらりっと熱が滑りでた。
「あ、ご、ごめ。なさ。気付かなくて」
「どうすれば思い出せる?」ヒバリの背中を抱き返しつつ、リボーンを見遣る。
 返答は短い。声もない。ただ、首を左右に振るだけだ。
「っ……」ぎり、と、奥歯が鳴った。
 ふるえた声をだしながら、ヒバリは綱吉を抱く腕に力を込めた。
「おしえて」風が鳴ったような、細い、小さな声だ。
「知りたいんだ。思い出せないなら、何をしても無駄だっていうなら」
 わずかに躊躇ったすえ、ヒバリが続けた。
「きみのことぜんぶを教えて……。今から」



「あ」
  一瞬、言葉がでなかった。頭が真っ白になる。彼から、そんな言葉を貰うとは思いもよらなかった。ヒバリの背中に回した腕が、指が、ぶるっと戦慄いた。
「は、はい――っ。お、教えます! はい!」
「うん。きちんとね。全部、覚えるから……」
 心臓が早鐘を打っている。鼓動は、ぴったりとくっ付いた風紀委員長の体からも届いてくる。桜の花びらが口に入った。
(苦い。香りは甘いのに)かすんだ視界の向こうで、桜がさざめている。
 百万本はあろうかという桜の群れだ。
 海は大地に飲み込まれたが、未だに桜はある。綱吉は目を閉じた。夜桜に誓ったのが、もう何年も昔のようだ。ヒバリがうな垂れれば、呼応して風が吹く。


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ゆるらべる」のヤマタさんから「一満の桜がごとく!」を
イメージしたイラストをいただきましたーv  思わずここまで引っ張ってきました。
桜がきれいで、静かに抱き合うヒバリさんとツナの空気がやさしげで…!
映画のワンカットのような演出がまたっ。ありがとうございました!


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