空を見上げる者はいなかった。
 試合を食い入るように見つめ、視界の大部分を空に託すときがあったとしても、その目はホームランボールを追いかけていた。わあわあと歓声が飛び交う中で彼らは生きていた。
 彼はまだマフィアではないと一人の子供が脳裏でうめく。
 しかしマフィアになる。だから付け入るスキがある。(……けれど彼はまだマフィアでない)
 呪文のように繰り返して、しかし、子供は自ら思考を分断させた。考えても考えても先のない問いである。マフィアは殺す、 世界中のすべてを殺してやると唇の中で囁き、それは自らに言い聞かせるような響きがあったが、そうしたものを感じ取る人間はこの場にはいなかった。
(骸戦がウソみたい。でもオレは中学生なんだから)強く言い聞かせていたのは、子供の視線を浴びていた少年だった。両手をぎゅうと握って、バッドを振る友人に歓声をおくる。
(これがフツウだ。オレはマフィアにはならねーもん)
(ボンゴレの血が覚醒しだしてる)うめいたのは、彼の隣に腰かけていた赤子だった。去りゆく子供の背を見送った彼は、ゆっくりと沢田綱吉を振り仰いだ。
(ディーノは乗り越えた)別の意味では、超えたのではなく捨てたのだ。
 帽子のツバをさげた。オマエはどうなるかな、と、唇で呟いた。
 泥の混じった大地は、目に痛いほどの陽光を照り返す。それによって晴れ渡る空を知った。
 リボーンは空をみつめる。晴れやかな青い草原は星を包みこみ、すべてのものに青をみせる。
 彼は静かに確信した。だから、(オレはきらいなんだよ)俯いて、青をどかした。
(人のなかに生きる平等は、死だけだ。そうだったろ? ディーノ)

 

 

 












05.1.29

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