近い将来

 

 

 

 俺はヒットマンだ。
 気が付けばそうだった。
 それ以外の俺は知らない。そんな選択はありえない。
 今はボンゴレ十代目の家庭教師が肩書きにくっついている。
 
  あのどーしようもない馬鹿ガキはもうすぐ高校を卒業する。
  だのに、まだ満足にイタリア語も喋れない。どうしようもないダメっぷり。

 それでもこの頃はマシになった。
 簡単に根をあげなくなった。まっすぐに人を目を見返すようになった。
 背筋をピンと伸ばして胸を張って歩くようになった。曲げたら鉄拳制裁なんで当然か。

「いつになったらイタリアに行くの?」

 その問いかけは三日前のものだ。
 むくり、と、起き上がって胸中で呟いた。
 ハンモックから顔をだせば、まだ明け方だった。
 ツナはベッドから上半身を落として青い顔をしている。
 それでも眠ってるんだから、本当に、ダメツナだ。ため息がこぼれた。
『いつになったらイタリアに行くの?』
 蹴ってツナをベッドに戻す。問いかけが蘇った。
 かつての中学生は大学生だ。かつての陰険な関係はいつしか友人関係に落ち着いていた。ように、見える。
  あいつは家に出入りするようになった。便宜上は勉強を教えると言っている。
 ウソだ。本当のことを話していない。目を見ればわかる。こいつもまた、前にはしないような目つきをするようになった。ツナには穏やかな笑顔すらみせる。俺には牙をむきだしにする。
 ああ、ツナとツナのママン以外には、か。
 ガラにもなくため息がこぼれそうだぜ。俺が欲しいのはマフィアの忠実な構成員であって、それ以上の熱烈な輩はいなくていいんだが。これに関しては他のヤツらにも一言二言つっこんでやりたいトコだが、あいつがいちばん顕著だ。ああいうタイプがツナ個人に執着したら、ヘタしたらボンゴレの壊滅だって望みかねない。
  ボンゴレよりもツナを優先しておいて、何より優先するのは自分の意志ときた。
  泣きじゃくるツナを引きずってだってあいつは歓喜にふるえることができる。厄介だ。
 もっと厄介なのは、そうした俺の考えをあいつが読んでるということだ。
 ツナはどこまでいってもダメツナだ。厄介なのばかりを目にかける。
 ハンモックに戻ったが眠れそうになかった。成長したこの体には、この寝床は狭すぎた。
 目を閉じれば獰猛な瞳とぶつかった。ガラにもなくため息がでるぜ。
「いつになったらイタリアに行くの?」
「お前がツナから目を離した時だよ」

 

 


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リボーンに「俺はヒットマンだ」といわせたかった